世界陸上の日本選手団の全競技が27日、男子マラソンをもって終了し、今大会はメダル獲得者2人(金1、銅1)、入賞は過去最高の11となった。

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今大会は、しっかりと参加標準記録を破って準備している選手は確実に成績を出した。

世界ランクや追加招待の場合、ぎりぎりで決まるので難しい。パリ五輪は、例えば男子100メートルの参加標準が10秒00。それに近い記録を持つ選手は、しっかりと記録を破って、堂々と本番に臨んでほしい。

男子400メートルリレーは3走小池と4走サニブラウンでイメージしたバトンができなかった。サニブラウンが振り向いたことで、加速してスピードに乗せる動作がいったん間延びした。日本の強みが出なくなった。ただそこから、加速力を発揮したサニブラウンはある意味ですごいし、バトンを渡しきった小池君も精いっぱいの行動だっただろう。

他国もバトンミスはあった。優勝の米国は2走カーリーが3走とぶつかりそうになった。3走は通常は根元を持つバトンの先を持って走り、左手、右手と持ち替えたり。決勝の国でバトンの強みがあったのは日本とイタリアだった。日本は最後までつないだことで2、3位とのタイム、距離間がわかったことは次に役立つ。きれいにバトンが渡っていたらメダル争いは確実にできていただろう。

パリ五輪を考えれば、サニブラウンがどの種目をするかで変わってくる。100メートル、200メートルをする場合、日程的にリレーの予選は難しくなる。今大会も両種目で決勝に進出したライルズ(米国)ヒューズ(英国)はリレー予選を走っていない。その場合、日本として5番手の選手が大切になる。今回出場していない山縣、桐生、若い選手がどれだけ五輪イヤーに上がってくるか。そこにメダルはかかってくる。

1600メートルリレーは、理想と実際のレースの流れが違ったのかなと思う。マイルリレー(1600メートルリレー)は、2走の200メートル地点を、どの順番で通るかが重要。その順番で、3走はリレーゾーンで内側から順番に待つ。通過が後ろになると(外側の)スタンド寄りになる。日本の最後に粘ることができる選手たちが、横にふくらまざるをえない、展開が多くなった。

同組(で先行した)インドのようなレースをイメージしていたのかもしれない。それができる個々の能力だったので、少し流れに乗り切らなかったと思う。

マイルリレーでは、ラストの100メートルをものすごく走れている選手はいない。200メートル、300メートルまでとにかくいいポジションで、と思って(前半は)突っ込んでいくケースが多い。走力がある日本チームは後半に追いかけてきて、しかし(リレーゾーンで)また離されて、という繰り返しになってしまった。インドのようなレースができていれば、本当にメダルだっただろう。これは紙一重だと思う。

スプリント全体を見れば、ライルズ(米国)が3冠。これは米国が底上げ、層を厚くしてきたというところだ。ボルトの次にスプリント界を担う選手がはっきりしてきたと感じた。(男子100メートル元日本記録保持者)