【ブダペスト(ハンガリー)28日=藤塚大輔】陸上の世界選手権は前日27日に全日程が終了し、日本選手団はメダル2個(金1、銅1)と過去最多の入賞11で幕を閉じた。顕著だったのは国際経験の差。北口榛花やサニブラウン・ハキームら海外を主戦とする選手の躍進が光った一方、国際舞台の経験が乏しい選手は厳しい現実を突きつけられた形だ。来年のパリ五輪、再来年の世界選手権東京大会へ、収穫と課題、明暗くっきりの今大会を総括する。

大舞台で力を発揮したのは、やはり自ら海を渡った選手たちだった。女子やり投げの北口は金メダル。男子100メートルのサニブラウンは史上初の2年連続決勝進出で6位入賞した。北口は19年から単身でチェコへ移って同国コーチに師事、フィールド種目で日本女子初の優勝を遂げた。サニブラウンは都内の高校を卒業後「与えられるだけの環境では成長できない」と米フロリダ大へ進学し、日本勢唯一の9秒台4度マークの存在に成長。日本陸連の山崎一彦強化委員長から「どう世界と戦うのかを示すことができた」と評価された。

一方、好成績が期待された競歩勢はメダル獲得者1人に終わった。男子20キロ競歩で24位に沈み、大会3連覇を逃した山西利和(愛知製鋼)や、前回2位から15位後退の池田向希(旭化成)は、今年に入って1レースに出ただけ。海外での実戦経験が乏しかったことも敗因の1つに挙げられる。

国際経験の差が、如実に表れた。北口は海外転戦のメリットを「経験値も上がるし、友達も増えるし、移動への耐性もつく」と説明する。男子110メートル障害で日本勢初入賞となる5位となった泉谷駿介も、今年6月から世界最高峰シリーズのダイヤモンドリーグ(DL)で2試合に出場。「DLの結果で自信がついた」と手応えを口にしていた。

ただ、先立つものは必要だ。東京五輪後は助成金などが目減りし、山崎氏は「財政状況が悪くなる中、派遣だけは続けたいが。考えていかないと」と今後の慎重判断を示唆した。それでも創意工夫するしかない。短期間の合宿で力を伸ばす道もある。女子5000メートル8位入賞の田中希実は国内に軸足を置きながら、約2週間のケニア合宿や欧米遠征で強豪アフリカ勢との駆け引きを身につけていた。

パリ五輪まで1年を切った今、大きな変化はリスクも大きい。しかし、あらがわなければ置いていかれる。日本陸連が上位選手らに強化費を集中する可能性もある中、どう国外実戦計画を立てるかが浮沈の鍵を握る。