身長195センチの大型ハードラー豊田兼(20=慶應義塾大)が48秒47をマークし、来夏のパリオリンピック(五輪)の参加標準記録(48秒70)を突破した。来年6月の日本選手権の成績次第で、初の五輪代表が決まる。

参加標準を大きく上回り、日本歴代6位の好タイムを記録。「自分でも驚く結果。秋シーズンはここに向けて練習を組んでいた中、標準を切る結果となったので非常に満足しています」と声を弾ませた。

前半から飛ばし、一気にスピードに乗った。「力感をあまり出している感じはなく、本当に楽にスピードを出していけた」。後半でも減速を抑え、フィニッシュラインを越えると思わず前向きに倒れ込んだ。電光掲示板のタイムを確認すると、右手を突き上げて喜んだ。

「ギリギリの戦いだと思っていたので、最後は気合を入れて転ぶくらいまでして。少し無理をしました」。そう言って、口もとを緩めた。

豊田は110メートル障害、400メートル障害の2種目に取り組んでいるハードラー。110メートル障害では今夏のFISUワールドユニバーシティゲームズで世界一となり、日本歴代6位となる13秒29の自己記録を保持。400メートル障害でも9月の日本学生対校選手権(日本インカレ)を48秒91で制した。

そんな中、強く意識し続けてきたのは今夏の世界選手権(ブダペスト)代表の黒川和樹(22=法政大)。「いつも追いつけない存在」でもある1学年先輩は、ブダペスト大会でも準決勝へ進出した。

「いつか追いつきたいと思っていた。やっと追いつけたと思います」

タイムの上では黒川の自己ベストである48秒58も上回ったが、豊田に慢心はない。

「一緒にレースを走ってみないと分からない部分もあるので、来年の日本選手権で黒川さんと勝負したい」

目指し続けてきた五輪舞台へ、着実に近づいている。