成年女子300メートル決勝で、山形・青野朱李(23=NDソフト)が大会新記録の37秒33で2連覇を達成した。

自身が昨年打ち立てたタイムを0秒20更新。自己ベストも塗り替えた。主戦場の200メートルで全国高校総体、日本学生陸上対校選手権(日本インカレ)、全日本実業団対抗選手権など数々のタイトルを獲得してきた東北最強スプリンターが、前回の栃木に続いて鹿児島の地でも輝きを放った。

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青野が女王の底力をいかんなく発揮した。成年女子300メートル決勝。ためていたパワーを一気に開放し、ぶっちぎった。残り50メートル付近。並走する展開から勝負どころと見るや「しっかり最後を刺す」プランを実行し、突き放しにかかる。2位に0秒23先着。「優勝と大会新記録、自己ベストっていうところは本当に花丸かなと思ってます」。充実の表情でサングラスを外し、青空に両手を掲げた。

プレッシャーとの闘いだった。「どうしても2連覇が頭にあって、本当に緊張していた」。決勝当日は午前6時30分起床予定も「変な時間に起きちゃって」と、その数時間前に目覚めた。レースのことを考えてしまい、十分に寝付けなかったという。それでも、会心の走りで不安を吹き飛ばした。

山形・東根市出身で山形中央では2年時の全国高校総体で200メートル優勝、100メートル3位、3年時が200メートル2位。山梨学院大では2年時にコロナ禍と不調が重なり苦しんだが、4年時の日本インカレで100メートル、200メートルの2冠を達成し、有終の美を飾った。社会人1年目の今季は日本選手権で200メートル4位、100メートル6位、全日本実業団対抗選手権では200メートル優勝と着実に結果を残してきた。

山形・南陽市が拠点のNDソフト所属だが、現在は母校・山梨学院大で活動を続けている。練習環境こそ同じだが、社会人となり「走るのが仕事っていう中なので、結果を出さないといけない自覚とか責任っていうのは『学生とは違うなって』すごく感じているところです」と、心理面での変化を実感している。

来年はパリ五輪、25年は東京で世界選手権が控える。当然、両大会への思いはあるが「日本選手権がやっぱり一番大きいところで『相性が悪い』と言ってられない。そこでしっかり結果を出すのが直近の目標かなと思います」。世界への扉を開くため、地に足をつけて前に進む。【山田愛斗】

 

◯…成年女子やり投げ 今季の日本インカレを制した宮城・兵藤秋穂(筑波大大学院2年)が、52メートル82で7位に入った。古川黎明(宮城)3年時に出場した17年の愛媛国体で2位に輝いて以来、自身2度目の入賞を果たした。「今回に関しては入賞できたことが一番の収穫だった」と振り返った。

◯…少年男子Aやり投げ 秋田・岡部倖也(秋田南3年)が59メートル24で6位入賞を決めた。「自己ベスト(63メートル08)を出せば3位に入れたので悔しい。自分の弱さが出てしまった」。試合を通して左肩が下がってしまう課題を修正できなかったという。今後に向けては「全国で毎回記録を出せる選手になりたい」と話した。