男子マラソン日本記録保持者の鈴木健吾(28=富士通)が初の五輪切符を懸け、3日の東京マラソン(東京都庁~東京駅前・御幸通り)に挑む。

1日、都内で招待選手会見に出席。今大会はパリ五輪男子代表の最終選考会を兼ねており、設定記録(2時間5分50秒)突破&日本人最上位で内定する。すでに女子で代表入りを決めている妻の一山麻緒(26)とともに、夫婦での五輪出場を目指す。

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鈴木は穏やかな表情を絶やさなかった。近年は股関節痛などに悩んできたが「足の不安はない。マラソンを楽しみたい」と最終決戦を待ちわびた。

五輪出場には、日本歴代3位相当の2時間5分50秒の突破が必須条件。日本人で唯一、2度も2時間5分30秒切りを達成している男は「出せないタイムではない」と燃える。心身が充実しているからこそ、自信があふれた。

コンディション不良が重なり、22年3月の東京マラソン以降はレースから遠ざかった。昨年10月には約1年7カ月ぶりのマラソンとしてMGCに臨むも、12キロ手前で途中棄権。志願の出場も歯が立たず「今の状態では勝負に全く絡めない」と力不足を認めた。

ただ、そのレースは転換点にもなった。MGC当日までは「日本記録保持者」の重圧を少なからず感じていたが、現状を知ったことで「プライドや肩書もなくなった」と心が軽くなった。新たに「チャレンジャー」として、前を向くきっかけになった。

思うように走れない期間も体幹の強化を継続。同12月中旬から本格的な練習を再開し、鹿児島・徳之島や奄美大島のアップダウンのあるコースで土台を固めた。

福嶋正総監督(59)も「気持ちを切らさず、くさらず、今できることをやってきた」とうなずく。かつてはその熱心さが故障につながったこともあったが、新たに冷静さも備わった。鈴木は「今はコントロールして走っている」と進歩を実感する。

何よりも、同じアスリートとして奮闘する一山の存在が心の支えとなった。「練習でも生活でも1歩上。すごく刺激になっている」。その妻は東京五輪に続き、2大会連続の代表入りを決めた。パリでは一緒に五輪の舞台に立つ。

「次こそは、という思いでやってきた。先は越されたが、追いつけるようにしたい」

復活の先には、悲願の五輪が待っている。【藤塚大輔】

◆パリ五輪への道 男女マラソン代表は各3枠。男子は昨年10月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)1位の小山直城、同2位の赤崎暁が決定。残り1枠は、東京マラソンで設定記録(2時間5分50秒)を突破した最上位選手が内定する。突破者不在の場合は、MGC3位の大迫傑が代表に決定する。女子はMGC1位の鈴木優花、同2位の一山が内定済み。10日の名古屋ウィメンズマラソンが最終選考会となっている。

【東京マラソン】パリ五輪男子残り1枠に鈴木健吾&其田健也らが挑む/ライブ速報します