今年初めての「ハナことば」なので、私自身が年末年始を過ごしたオーストラリアのことを書きたいと思う。

シドニーのラグビーに関しては以前のコラムで書かせてもらったが、今回は「スポーツと日常」という観点で書いていきたい。


2017年11月4日に行われたラグビー代表戦、日本-オーストラリア
2017年11月4日に行われたラグビー代表戦、日本-オーストラリア

シドニーには親戚が住み、兄もシドニーで育った背景があるので、幼少期からシドニー、オーストラリアには親しみがある。現役引退後は、年末年始のオーストラリア滞在がほぼ恒例になっている。もちろん行けない年もあるが、感覚的にはそんな感じだ。


今回の滞在では、シドニーはもちろん、首都であるキャンベラ、ゴールドコーストから約1時間のバイロンベイを訪問した。

シドニーとキャンベラには知人や友人も多く、会ってたくさん話した。彼らとの話題で共通していたのは「2019年はラグビーワールドカップだね!」。

ラグビー(15人制、13人制)はオーストラリアでとても人気があるし、注目するのは当たり前ではある。代表チームはワラビーズという名称で親しまれている。2015年のイングランドで行われたラグビーワールドカップの決勝戦は、ニュージーランドのオールブラックス対オーストラリアのワラビーズ。勝ったのはニュージーランドだった。

競泳でも強豪国のオーストラリア。しかし国の人口は、2018年で約2500万人だ。比べて日本の人口は約5倍の1億2600万人。この人口差で、この競技成績。考えるところもある。

私は、スポーツが生活の中でとても重要な役割を果たしていると思うし、この価値を伝えていかなければと考えるからこそ、ここに注目したいのだ。


クリケット、オーストラリアンフットボールなど、日本ではなじみのないスポーツも大人気だ。今回の滞在中は、クリケットの国際試合がバーでずっと流れていた。

2017年に公開された映画「ライオン」。グーグルアースで自身のインドの故郷を探すという内容で、主人公のインド人の里親になったオーストラリア人とクリケットを家族でするというシーンがあった。私の親戚の家はシドニーのノースにあり、そこの近所では子供たちがクリケットのバットを持って遊んでいた。それくらい彼らの生活に根付いている。日本で言えば、野球のキャッチボールのような感覚だろうか。


写真左は朝7時からオープンしているプール。右はAISの体験型施設
写真左は朝7時からオープンしているプール。右はAISの体験型施設

オーストラリアには、私が大好きな文化がある。朝から運動をする文化。カフェ文化。この2つだ。

1つ目の、朝から運動をする文化。

オーストラリア滞在中は、日本にいるときより泳ぐ(休暇中ではあるが)。朝7時からプールはオープンし、カフェも同時間から始まる。そのプールは、ビジターの私たちももちろん利用可能。地元の人たちが思い思いのフォームで水泳を楽しみ、その隣にはコンペティター。選手たちもプールから湯気を出しながら必死に泳いでいる。

「体験しないとそのひとの痛みや苦労はわからない」

昔、誰かに言われた言葉を思い出す。隣で選手たちが泳ぐ姿をみんなが見て、「頑張れ」と心の中で応援する。身近に頂点を目指す選手がいる。イメージができるのだ。どれだけすごいことなのか。


これを感じたのはキャンベラにあるAIS(オーストラリアン・インスティチュート・オブ・スポート)でもだ。私はキャンベラの日本大使館にも訪問させていただき、また友人にも会いに行った。その際に日本のJISS(国立科学スポーツセンター)のモデルにもなったAISに訪問した。もちろん、泳ぐ。

現役時代は合宿でも試合でもよく訪れ、どちらかというと「苦しい」場所だったが、今は全くその印象はない。素晴らしい施設だなと感じる。今になって気がつく。素晴らしい環境で試合をし、競技を続けることができていたんだと。

プールに入り、「ビジターですが、泳げますか?」と聞くと「もちろん!キャップはありますか?」など優しく答えてくれた。

こんなトップアスリートが利用するプールでも、ビジターがいつでも利用できる。水着も競技用でなくても問題ないし、リラックスして泳ぐことができる。

また、毎日実施しているAISのツアーがあり、これも予約なしで参加できる。有料だが30人くらいが参加していた。全部の施設を案内してくれて、オーストラリア選手の紹介もしてくれる。競技について知ることができ、いい時間だった。

ツアーの終盤には体験型の施設があり、オリンピック競技、パラリンピック競技を体験できる。クライミングや自転車に挑戦した私は、頑張りすぎて汗だくになった。

「ここで最後なので、もう解散してもいいですよ」

ガイドをしてくれた女性は言った。私は、失礼かなと思いながら年齢を聞いた。びっくりしたことに彼女は「シックスティーン」と答えた。なんと!「16歳」!!。夏休みだから手伝っているとのこと。自身はホッケーの選手で、州の中で一番を目指していると話していた。

この若者がこの施設を説明する。しかも、カンペもなく堂々と。

「スポーツが素晴らしい」

この文化が根付いている場所だ。そう感じた。

最後にカフェ文化。

朝7時からオープンし、14時から16時には閉まってしまうが、朝泳いでカフェに行くこの時間がまさに「comfortable」。心地が良い。


2019年、日本はゴールデンイヤーズへ突入した。スポーツの世界大会が連続して国内で開催される。

日本ができること、私たちができること、自身ができること。それぞれが考えていく価値はある。

今年も「ハナことば」よろしくお願いいたします。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)