2022年冬の北京オリンピックが世界中で大きな盛り上がりを見せている中、日本では飛び込み競技でも熱い戦いが繰り広げられた。今月10日から13日にかけて、浜松市総合水泳場ToBiOで「翼ジャパンダイビングカップ兼国際大会派遣選手選考会」が行われた。

今大会では、今年行われる予定の「ユニバーシアード大会」と「アジア選手権」の代表選手が選考された。本来なら5月に福岡で行われる予定だった「世界水泳」の選考も兼ねていた。しかし、世界中で今なお猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響により大会が2023年夏の開催に変更となったため、今回は対象とならなかった。

オリンピックの翌年である今年。世界では、オリンピックに出場したベテラン選手は休む傾向もある。しかし、日本ではあまりそのような選手はおらず、今大会にも照準を合わせ、トップ選手たちもしっかりと練習を積んで試合に臨んでいた。

初日に行われたのは、男子板飛び込み。若手が下から追い上げてくるなか、決勝では坂井丞(29=ミキハウス)がベテランの意地を見せ、久々の優勝を飾った。

2位につけたのは須山晴貴(23=栃木県スポーツ協会)だ。大きな体格を生かし、ダイナミックな演技が魅力的な選手である。板の力をうまく使い、難易度3.4以上の高難度の技を6本中4本そろえている。予選では2位に40点差をつけての1位通過。安定感もあり、そのまま決勝でも決めてくるだろうという期待が高まっていた。しかし、高難度の技は決まれば高得点だが、リスクも大きい。決勝では、中盤でのミスが最後まで響く形となってしまった。

そこで、じわじわと追い上げを見せたのが坂井だった。難易度では劣っているものの、持ち前の水切れ(ノースプラッシュ)とキレのある動きを武器に、トップ争いに加わり逃げ切った。

男子は1本のミスが命取りになる。さらに、国際大会では、予選から気を抜けない厳しい戦いが待っている。本番までの限られた時間での修正力に期待したい。

2日目に行われた女子高飛び込みでは、板橋美波(22=JSS宝塚)が数年ぶりに頂点に返り咲いた。2016年リオデジャネイロオリンピック後からケガに悩まされてきた彼女。試合にすら出られない時期もあった。心身共に苦しい日々が続き、目指していた東京オリンピックでは、荒井祭里(21=JSS宝塚)と組んだシンクロ種目には出場できたものの、個人での出場はかなわなかった。その悔しさを、今大会ではようやく晴らすことができたのではないだろうか。

男子にも劣らないほどの身体能力が武器だった彼女。パワーと勢いで戦ってきた10代から、さまざまな困難を乗り越え、人としても成熟してくる20代に入った。演技にもその「旨味」がプラスされ、さらなる進化を遂げるベテラン選手になってくれるだろう。今後も彼女の活躍が楽しみだ。

北京オリンピックも後半戦。連日の日本人選手の活躍に、感動と勇気をもらった人も多いのではないのだろうか。オリンピックまでの4年間、あるいはもっと長い年月をかけてこの舞台を目指し、夢見て努力してきたことは間違いない。人生をかけ、命を削って戦っている選手たちが、納得のいくかたちで大会を終えられることを願っている。そして、どんな結果であろうと、日本代表として戦った自分を褒めてあげてほしいと思う。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)