日本勢の活躍で盛り上がる北京五輪だが、心に引っかかるものがある人も多いはず。スキー・ジャンプ高梨沙羅らの失格騒動、スノーボード平野歩夢の不可解な採点、スピードスケート男子500メートルでの不正スタート、ショートトラックの判定、観客の大声援…。競技外での話題に事欠かない。

人工雪の硬さや強風などコンディションの悪さも問題になる。13日のアルペンスキー男子大回転では出場87人中33人が棄権。自然相手だけに仕方がない部分はあるし、採点が物議をかもすのも冬季五輪では珍しくない。それでも、中国での開催というだけで不信感を抱く人がいるのも確かだ。

さらに、大会最大の「話題」が、フィギュア女子の金メダル候補ワリエワのドーピング違反。個人種目出場の可否は14日に出るが、出ても出なくても影響は大きい。欠場ならば「大会の顔」を失うことになるし、出場すれば世界中からのバッシングは間違いない。

それにしても、フィギュアでドーピング違反? と思う。冬季五輪で違反件数が多いのはアイスホッケーやアルペンスキー。フィギュアは件数も少ない。検出された薬物はトリメタジジン。持久力を上げる効果があるという。演技後半でも体力が必要な4回転を跳べる秘密かもしれない。

フィギュアのドーピング違反では、前回18年平昌五輪で8位になったロシアのマリア・ソツコワの例がある。20年に20歳で引退し、21年に10年間の資格停止処分を受けた。ロシアの女子フィギュア選手が「短命」なことも、禁止薬物と結びつけて考えてしまう。

15歳のワリエワが自ら薬物に手を出したとは考えにくい。コーチやスタッフが与える「薬」を飲んだだけではないか。やはり、組織的なドーピングが続いていると思えてならない。

ロシアは14年ソチ五輪後に組織的ドーピング違反が発覚し、今大会も過去に違反がない選手がロシア五輪委員会(ROC)として出場している。しかし、その処分でいいのか。ROCが本気で反ドーピングに取り組まない限り、また違反者が出ることになる。

競技の「顔」が違反したことで、フィギュア全体のイメージも悪くなる。重量挙げのような「五輪除外」はないだろうが、日本勢やネーサン・チェンらが作ったクリーンな印象も台無しになる。【荻島弘一】

(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

公式練習中、頭に手をあてるワリエワ(撮影・垰建太)
公式練習中、頭に手をあてるワリエワ(撮影・垰建太)