ハンドボール日本リーグ(JHL)が1日、24年にスタートする「次世代型」プロリーグ参入申請チームを発表した。申請したのは男子9チーム、女子10チーム。驚きだったのは、開催中の男子リーグ戦で首位を走る「ジークスター東京」の申請見送り。プロ化に向けて華々しく行われるはずの発表会見が、衝撃の「事件」に騒然となった。

ジークスターは、18年創設の東京トライスターズを前身に、20年から日本リーグで活動するチーム。東京五輪主将の土井杏利、日本の司令塔東江雄斗ら新旧の代表選手を次々と獲得。昨年は東京五輪金のフランス代表アバロも加入し「銀河系軍団」とも呼ばれた。

強化だけでなく、地域貢献、社会貢献活動、次世代の育成、ファンサービスなど新しいアリーナエンターテインメントを目指して活動している。プロ化にも積極的で、新リーグの「牽引役」とも見られた。日本リーグ時代のサッカーで言えば、読売クラブのような存在。読売がJリーグに参加しないのと同じなのだ。

背景には、JHLが打ち出した新リーグの形態がある。「次世代型」とは「シングルエンティティ」を日本流にアレンジした制度のこと。収益にかかわる部分をリーグが一括管理し、各チームはリーグから分配金を受け取る。JリーグやBリーグなどとは違う、初めてのリーグ形態になる。

企業チームの福利厚生が中心のJHLにとって、性急なプロ化はハードルが高い。資金面や運営力など各チームの体力も足りない。そこで、リーグがすべて面倒を見て、全体で発展していこうというプラン。いわば「護送船団」方式だ。

極論すれば、チームが何もしなくてもリーグ任せでやっていける。「丸投げ」した上に「タダ乗り」できる。ただ、ジークスターのようにプロ化へ努力してきたチームはたまらない。自分たちの力で得た収入がリーグを通じて全チームに分配される。不公平感を持つのも当然といえる。

もちろん、JHLも問題点は認識している。だからこそ、何度もチームと話し合いを重ねてきた葦原和正代表理事は「すべてのチームに120点の答えは出せない」と苦しい胸の内を明かす。もともとチーム間の温度差が大きくて前に進めずにきたJHL。全チームの顔色をうかがいながらでは、ジリ貧は脱せない。

新しい制度のリーグだけに、全体像は見えずらい。ジークスターの他にも、大崎電機、湧永製薬など伝統あるJHLの強豪が申請を見送ったが、こちらは「様子見」の感もある。ただ、参加チームがどうあれ、走りだす時は迫っている

今回参加を見送ったチームは、再編JHLに所属する見込み。次年度以降の新リーグ参入も可能だから、サッカーのJリーグとJFLのような形だ。不参加チームから参加チームへの選手移籍も活発化するはず。ジークスターが参入を見送り続ければ、選手の草刈り場となる可能性もある(引き留めはあるだろうが)。

参加見送りが明らかになった1日、ジークスターは公式HPで「プロリーグの方向性は合致」としながらも「様々な背景を持つ各チームの意見が汲み取られ」れば、改めて参入を検討するとした。

JHLも、ジークスターも、いや大崎電機や湧永製医薬も、ハンドボールの明るい未来を目指しているのは変わらない。ならば、どこに妥協点を見出すのか。みなが「120点」を求めているうちは、これまで通り何も変わらない。(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

新リーグ参入審査を見送ったチーム(JHL所属)
新リーグ参入審査を見送ったチーム(JHL所属)