高校女子バレーボール屈指の名門東京・下北沢成徳高が、2大会連続で全日本高校選手権(春高)出場を逃した。15日の代表決定戦準決勝(文京学院大女子)、3位決定戦(八王子実践)と共にフルセットにもつれる接戦を演じたが、競り負けた。

敗戦からわずか1週間余り。3年生たちの中にはいまだ気持ちの整理がついてない人は少なくない。下級生たちは、この悔しさをバネに来年こそ全国の舞台で頂点に立つことを目標に練習に打ち込んでいる。

輝かしい実績を残し続けている伝統校だが、他校と同じく新型コロナの影響で実戦機会が乏しかったことに悩まされた。新人戦を皮切りに、インターハイ予選、国体と試合経験を積んでいくのが例年だった。

今年は新人戦を終えた後、インターハイ、国体が相次いで中止になった。練習試合をする機会はほとんどなく、チーム練習を中心に強化してきた。小川良樹監督は「試合の中で身に付けていく対応力が不足していました」と振り返る。

春高バレーの東京都代表決定戦では、強いサーブで相手を崩す名門校の持ち味が影を潜めた。競り合った場面で思い切ったプレーができなかった。「『サーブを強く打とう』と負荷をかけすぎてしまいました」と小川監督。これまで数々の実績を残してきた名将は、築き上げた「勝利の方程式」を優先してしまったという。選手の状況に応じた采配をするべきだったと悔やむ。

敗戦後も3年生はこれまでと変わらず練習を続けている。小川監督は「ほとんどが実業団や大学で競技を続けます。卒業までにどれだけ成長するかが、次の舞台での飛躍につながります。東レですぐに欠かせない存在になった石川(真佑)も黒後(愛)もそうでしたから」。

チームを引っ張てきた主将の谷島花虹さん(3年)やエースの舟根綾菜さん(3年)も、Vリーグで活躍するOGの背中を追い掛けながら黙々と練習に励む。谷島さん「自分で今何を考えて練習すればいいか学べた3年間は成徳を選んだから。後悔はありません」ときっぱり。舟根さんは「パワーを付けて強いスパイクが打てるようになりました。これからは技術も身に付けて将来日の丸を背負いたいです」と胸を張った。

新チームのエースとして期待されるのは、鹿児島出身の古川愛梨さん(1年)だ。OGで12年ロンドン銅メダル獲得の木村沙織さん(34)から熱烈なラブコールを受け、同校入学を決めた。身長184センチの長身を生かし、強いスパイクを広角打ち分けられる器用さが武器。「劣勢でも(ボールを)託される選手になりたい」と闘志を燃やす。

名門復活へ。多くの日本代表選手が育った体育館にはきょうも、部員たちの大きな声が響き渡る。【平山連】


◆平山連(ひらやま・むらじ)千葉・市川市出身、地方新聞社を経て19年入社の29歳。東京五輪に関わりたいと転職を決意したが、まさかの延期。気持ちを切り替え、いずれも未経験ながらバレーボール、サーフィン、アーチェリーなどを担当中。スポーツを通して世の中が変化を追うのがモットー。趣味は山登り、裁判傍聴

(日刊スポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

新チームのエースとして期待される1年生の古川さん(右)(撮影・平山連)
新チームのエースとして期待される1年生の古川さん(右)(撮影・平山連)
春高バレー予選敗退後も、3年生が中心となり練習に打ち込んでいる下北沢成徳高(撮影・平山連)
春高バレー予選敗退後も、3年生が中心となり練習に打ち込んでいる下北沢成徳高(撮影・平山連)