<フィギュアスケート:全日本選手権>◇23日◇さいたまスーパーアリーナ

 鈴木明子(28=邦和スポーツランド)が合計215・18点で優勝し、ソチ五輪出場を決めた。

 演技を終えると、鈴木は感情を爆発させた。両手で顔を覆って涙を抑えると、リンク上でぴょんぴょんと跳ねた。リンクサイドで長久保コーチから「教えてきて初めて泣けたよ」と声を掛けられる。「やったと思った」とうれし涙をこぼした。

 完璧だった。「オペラ座の怪人」に乗って、7度の3回転ジャンプを成功させ、スピン、スパイラルと情熱的な演技を見せた。「ここまできたらやるしかないと。(高得点は)びっくりした。自信になった」とソチ五輪への手ごたえを得た。

 昨季までは五輪を目指すかどうか明言を避けてきた。昨年12月のGPファイナルでソチの会場を訪れた。ここ数年、浅田、村上の3人と日本を引っ張ってきた。そのうちの2人がソチを目指す中で「見届けるだけでいいのか。ソチに行きたい」との思いが強くなった。「もう1度、ここに戻ってきたい」。競技人生の後悔を残すわけにはいかなかった。

 今大会は直前で絶不調に陥った。眠れない日々も続いたが、諦めず、長久保コーチとジャンプの基礎から見直して復調を期した。足が震えるほど緊張したが、長久保コーチの「氷の上では助けられない」との言葉を思い出し、開き直ってリンクに立った。今季限りで引退を決めている。「2度目の五輪では、フィギュア人生の集大成として、心を込めて精いっぱい滑りたい」と笑みを浮かべた。【田口潤】