【メルボルン(オーストラリア)=吉松忠弘】ニューなおみ誕生だ。世界4位の大坂なおみ(21=日清食品)が、過去わずか12度しかない逆転勝ちで2年連続の16強入りだ。同27位の謝淑薇(台湾)に5-7、1-4まで追い込まれながら、5-7、6-4、6-1の1時間57分で勝った。4回戦では自身初の全豪ベスト8入りをかけ、同12位のセバストワ(ラトビア)と対戦する。

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つらく、長い3セットを乗りきると、大坂は喜びと安堵(あんど)で天を仰いだ。そして、バイン・コーチら陣営の方を見てほほえんだ。勝利だけではない。自分の弱さを乗り越えたことに「それが一番うれしい。以前なら、もう諦めた試合だった」。初めてといっていいほどの粘り腰だった。

心が折れる寸前で踏みとどまった。こちらの球の速度を利用する相手に、強打をぶちかまし、逆にカウンターを食らった。緩急もつけられ、全く自分のリズムでプレーができない。「誰とも違うプレー。本当にやりにくかった」。5-7、2-4まで追い込まれた。続く第7ゲーム。相手のサーブで0-40。2-5になってしまうポイントが3本連続あった。「まだ1度サーブを落としただけ。これ以上、ゲームを与えちゃいけない」。1本ずつ挽回し、ピンチを乗りきると、一気に7ゲームを連取。完全に流れが変わった。

前哨戦のブリスベン国際準決勝で第1セットを落とすと、第2セットは投げやりなプレーに終始。「最悪の態度を見せちゃった」と反省した。それが象徴するように、諦めが早く、我慢ができないのが大きな課題だった。

第1セットを先取すると気持ちが乗り、負けない。現在61連勝中。最後に負けたのは16年10月の天津オープン準々決勝だから、約2年間負けなしだ。全米優勝の7試合もすべて1セットを先取していた。

しかし、第1セットを落とした試合は、この日を入れて64試合。逆転勝ちしたのは、13回しかない。43回がストレート負けだ。「前哨戦で学んで、私は変わったんだというのを見せたかった」。前日、15分で練習を止めた腰の故障は、一緒に練習した吉川女子代表コーチによると「悪くなる前に止めた。今日にかけていた証拠」という。大会前に自分を3歳児と称した大坂。子どもから大人へ成長した大きな試合だった。

◆大坂の第1セット得失勝敗 ツアー本戦とフェド杯を合わせて、大坂が第1セットを先取した試合は過去81試合。そのうち、ストレート勝ちが69試合、フルセット勝ちが7試合で、勝率は約9割3分8厘。フルセット負けは5試合しかない。しかし、第1セットを落とした試合は64試合で、そのうち、ストレート負けが43回、フルセットでの敗退が8回で、逆転勝ちは13回だけ。勝率は約2割3厘まで落ちる。世界1位のハレプは第1セットを落としても、勝率は約3割といわれており、ここに大坂との差がある。