暑さに勝て! 日本テニス協会が、来年の東京オリンピック(五輪)でメダルを獲得するために、本格的な暑熱対策を開始した。国立スポーツ科学センター(JISS)と共同で8月5日から1週間にわたる酷暑の中、三重・四日市テニスセンターにおいて被験者8人のデータを収集。アイスベストや、体内から冷やすシャーベット状の飲料の冷却効果を計り、東京五輪でのパフォーマンス向上に生かす「ひんやり作戦」を始めた。

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「ひんやり作戦」最終日の10日も、ぐんぐん気温は上昇した。四日市地方の気温は約35度、湿度約80%。昼頃に、チームがサーモグラフィーでコート上を照らすと、真っ赤になった。コート上の温度は約56度にも跳ね上がった。被験者の1人、プロ選手の小野田賢は「汗をかく量が尋常じゃない」とぐったりだ。

男女各4人ずつ計8人を、2人1組で、毎日、対戦させる。データ比較を平等にするため、対戦相手は毎日同じ。1ゲームも必ず3分半行う。そして1日3セットを戦う。その試合中に、心拍数、活動量、体内の直腸温度のデータを集める。疲れ具合の感覚なども選手の意見を聞く。

このデータが「ひんやり作戦」でどのように変化するか。それが東京への暑熱対策だ。選手はチェンジコートの度に保冷剤を入れ、外から体を冷やすアイスベストを着用。また、体内を冷やすためにシャーベット状に凍らせた飲料を摂取する。これで体がどのように反応するか。摂取量やタイミング、アイスベストの着用方法などを何度も見直し、最適な「ひんやり作戦」を探っていく。

チームのリーダーで、JISSの内藤貴司研究員によると、酷暑で体に熱がこもると「脳がこれ以上動くと危険というサインを送り、動きが鈍る」という。放っておくと「死に至りかねない」。つまり、暑熱対策は冷やすというより、どうやって体の熱を上げないかという方法だ。

この収集されたデータはすぐに分析され、26日に開幕する全米(ニューヨーク)で、錦織や大坂ら日本トップ選手に情報として伝えられる。さらに来年1月の全豪で日本の男女トップ選手が、実際に各自に合わせた「ひんやり作戦」を実行の予定。錦織、大坂の男女のエースに、最高の金メダル作戦が加わった。【吉松忠弘】