10月1日付で第2代スポーツ庁長官に就任することが決まった、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の室伏広治スポーツディレクター(SD=45)が11日、東京・晴海の組織委オフィスで会見した。

04年アテネ五輪の陸上男子ハンマー投げ金メダリスト。今月末に任期満了で退任する、88年ソウル五輪競泳男子100メートル背泳ぎ金メダリスト鈴木大地長官(53)の後任として、2代続けての五輪金長官に起用された。任期は2年。今後は組織委の職を退いてスポーツ庁の職務に専念する。

就任決定に際し、まず「心身ともに健全に心と力を寄せていきたい」とあいさつ。「私は陸上競技を極めてやってきましたが、スポーツにはたくさんの種類がある。水、冬、室内外、さまざまな魅力がある。そこを学びながらやっていきたい。心を伴わせていき、感動してもらえるスポーツ界にしていきたい」と第一声を発した。

現在は組織委のSDとして国際オリンピック委員会(IOC)や各国際競技団体(IF)との調整に当たっている。その今後については「スポーツ庁長官に自分自身のエネルギーを注いでいく。そこに専念していく。今後またスポーツ庁の内部や文部科学省の内部で何ができてできないか相談することになりますが、基本、スポーツ庁の長官としての職務に専念することになる」と意欲を語った。

組織委で経験したことを生かし、来夏に延期された大会へスポーツ庁長官としてどう向かっていくか聞かれると「組織委、東京都、国と連携しながら取り組んでいく。スポーツ庁と今後いろいろ相談しながら、まだ入ってないので分からないことも多いんですけど、スポーツが社会に与えるポジティブな貢献、競技力の向上、育成支援、五輪もパラリンピックもスポーツ教育も、さまざまな観点から貢献できるように精いっぱい頑張っていきたい」と所信表明した。

就任要請を受諾した理由については「私もスポーツ界に育てていただいた。魅力、特にスポーツというものはトップアスリートだけのものではなくて、注目されている健康であったり、さまざまな観点で、育ってきたスポーツが社会の役に立つのであれば、本当に素晴らしい仕事かなと思いました」と打ち明け、出したい色に関しては「感動してもらいたい。こういう時期でも、スポーツをする、見る、支える。そこで感動を生むようなスポーツ界にしていきたい」とした。

前任となる鈴木長官と何か話をしたか確認されると「まだ直接は(ない)。初代長官としての、五輪が来年行われる中での、ここ5年間に取り組まれたこと、さまざまな経験を持っておられると思うので、意見交換させていただきながら、うまくバトンを受け継ぎ、私も次につなげるようにしたい」と述べた。

会見前には、組織委の森喜朗会長が「二人三脚でやってきた」とねぎらいのコメントを出した。着任からの歳月を踏まえて、組織委での思い出を質問されると「会長、武藤(敏郎)事務総長の下、国、都、民間からたくさんの人が集まった中で、それぞれの仕事のやり方や文化もある中で、オールジャパンとして皆さんと取り組んできた。本当にいい経験だった。私は特に競技団体、IFやNF、IOCとのスポーツの仕事でしたけれども、例えば五輪で新種目ができたり、競技実施種目が増えたり、さまざまな調整を国際団体とアプルーバル(承認)を取っていく過程で使っていただきました。次につなげていきたい。1度では語れない」と、穏やかな笑顔で、感慨深そうに振り返った。

会見中に繰り返していた「スポーツと感動」という言葉の意味については「いろいろな意味で、健全な状態を保てるからこそスポーツは楽しい。フェアであるから楽しいし、スポーツのクリーンさが中心になるかなと思いますけど、感動したな、また次も頑張りたいなと思ってもらえれば。少しでも貢献できれば。アンチドーピングに日本としても力を入れている。そういったところも私の経験が生かせれば、精いっぱいやりたい」と説明した。

最後に「鉄球は7キロあるが、責任の重さはそれ以上でしょうか」と尋ねられると「はるかに重いと思いますが、分からないことも多いですが、皆さんの力を借りながら精いっぱいやっていきたいと思います」と締めくくった。