4年ぶり3度目の優勝が懸かる羽生結弦(26=ANA)が106・98点で首位発進した。演技後の日本時間26日にオンライン取材に応じ、今月20日の宮城県沖地震で自宅が被害に遭ったこと、内村航平ら体操選手から学んでいること、クワッドアクセル(4回転半)挑戦の現状と体重増、27日のフリーで演じる69年NHK大河ドラマ「天と地と」で主演した俳優石坂浩二からのエールに応えた。ペアの三浦瑠来、木原龍一組は10位に入り、日本のオリンピック(五輪)出場枠を1つ獲得した。

羽生はSP1位後の会見で「ネーサン(・チェン)選手も(鍵山)優真選手もホントに良い演技をされていたので、自分のベストをぶつけた」と両隣を見た。コロナ禍で2年ぶりの世界選手権。鋭い反転からのトリプルアクセル(3回転半)で全選手トップの出来栄え点(GOE)3・54を稼ぐなど、ライバルの存在に燃えて鍵山に6・02点、チェンに8・13点をつけた。

全日本選手権からの3カ月で、また苦悩していた。「自分の故郷、住んでいる宮城で地震があって家の中がグチャグチャになった。4回転半も跳び切れなかった。つらかった」。出国3日前に断念するまで粘ったが、世界初の大技投入は見送った。一方、その練習を通じて「筋力がつき、体重も増えた」。ソチ五輪は53キロ、平昌(ピョンチャン)五輪は57キロ。現在は何キロか聞かれると「嫌です。ふふふ」と笑顔でかわしたが「遠心力や慣性を取り込む筋肉がついてきた。最初は筋肉痛を伴っていたけど、それもなくなり、ほかのジャンプもリラックスして跳べるようになった」と安定の理由を説明した。

その過程で体操内村も参考に。「H難度の技が決まった時は刺激になったし、内村さんのドキュメンタリーも見ながら『こういう感覚なのかな』とか。4回転半はかなり大きな壁。どうやって回転数を増やすか、高さ、滞空時間を伸ばすか考える」ヒントになった。

26歳にして進化を続ける羽生。27日のフリーで「天と地と」を舞う。52年前に上杉謙信を演じた石坂から本紙を通じ「謙信の心を胸に翔(と)べ!」とエールを送られたことにも反応した。「謙信公という、文献や巻物でしか見たことがない方ですけれども、石坂浩二さんの中にも謙信の魂や心があったと思いますし、僕自身も心や魂、謙信公が見ていた風景、記憶とかを少しでも感じながら滑ることができたらいいなと思います」。4年ぶり世界一へ、目指す姿を表現すれば結果はついてくる。【木下淳】