羽生結弦(26=ANA)が4年ぶり3度目の優勝を逃した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年ぶりに開催された世界一決定戦。25日のショートプログラム(SP)は106・98点で首位発進したが、最終滑走のフリーはミスが出て182・20点の4位、合計289・18点の3位となった。1位ネーサン・チェン(21=米国)と2位の鍵山優真(17=星槎国際高横浜)に次いだ一方、22年北京五輪を「心待ちにしたい」と、3連覇が懸かる舞台への意欲を初めて明言した。日本は同大会の出場枠争いで最大の3枠を確保した。

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負けたままで終われるか-。羽生が初めて、来年2月への思いを明言した。「ベストを尽くして、北京五輪が来ることを心待ちにしたい」。演技後の会見。これまで「シャットダウンしている」「(コロナ禍で)考えている場合じゃない」と語ってきたが、言った。

それほど悔しかったはずだ。得点を確認すると表情を険しくした。3連覇したチェンの320・88点、さらには17歳鍵山の291・77点にも上回られた。「Rank3」-。表彰台にこそ踏みとどまったが、メダル色が銅となった瞬間を画面で確認すると、持っていたドリンクを床に投げつけそうな勢いで右手を振り降ろし、舞台裏へ下がった。

「すごく疲れました。バランスが1個ずつ崩れていって、自分らしくないジャンプが続いた」。目をつぶっても跳べるはずのトリプルアクセル(3回転半)も乱れ「バランスが崩れていた中で平衡感覚が…。最後まで軸を取り切れていなかったのかな」と困惑した。

言葉通り、序盤からミスが続いた。冒頭の4回転ループで氷に手を突くと、続く4回転サルコーも手でこらえた。3回転半も狂い、予定していた連続ジャンプを諦める。得点が1・1倍になる後半に用意した4回転-3回転の2連続トーループ、4回転トーループからの3連続ジャンプは決めたものの、序盤の不調が響く。世界選手権で日本人に敗れるのは17歳だった12年大会(2位高橋大輔、3位羽生)以来9年ぶりだ。その後は出場すれば常に銀メダル以上。まさかだった。

出国直前に「自宅の中がグチャグチャ」になったという地震に遭った。渡欧便や練習プランの変更が影響したのかもしれない。今大会は「目標は枠取りだけ。それ以外は気にしていない」と話していた。だが、いざ敗れると悔しい。18年平昌五輪で2個目の金メダルをつかんだ後は、世界の頂点にはチェンが君臨した。その後の国際大会無敗。羽生も直接対決では3連敗となった。鍵山の台頭も許した。今後はどうするのか。

ここで出たのが「五輪を心待ちにしたい」。そして前人未到の大技への思いも口にした。「4回転半(クワッドアクセル)を早く練習したい。まずは着氷して試合に組み込めるようにすることが目標」と言った。

羽生と世界選手権。14年はソチ五輪の金メダル後、17年は平昌五輪の金メダル前年に優勝した。北京五輪前年の今回は3位。はたして。その鍵を握るのは4回転半。王様のジャンプを習得することがリベンジへの第1歩になる。【木下淳】