国際オリンピック委員会(IOC)副会長で、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック開催準備の実務トップ、ジョン・コーツ調整委員長(71)が21日、今夏の大会期間中に緊急事態宣言が発令された場合でも開催すると断言した。

東京大会の準備状況を確認するIOC調整委員会の最終日に会見し、宣言下でも実施するか問われると「イエス」。万全の新型コロナウイルス対策を講じた上での開催への強い決意を示したものだが、実施を疑問視する世論に逆行した発言は波紋を呼びそうだ。

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緊急事態宣言下でも五輪は開ける-。コーツ副会長の発言は「宣言と五輪は関係ない」と言った4月のバッハ発言に続き、国内世論を相手に大失点となりそうだ。彼らの日本国民とかけ離れた感覚はなぜ生まれるのか。普段IOCとの会議に出席する組織委幹部はその理由について分かりやすく解説する。

「緊急事態宣言という響きは、欧米からするとロックダウンに聞こえる。でも欧米に比べ、日本は感染を抑え込んでいる。それなのに『何で東京がロックダウンをやるんだ?』とよく言われる」

そんな疑問を受け組織委は同宣言について一部罰則はあるものの、欧米のロックダウンほどの強制力はないと説明する。するとIOC側に安心感が生まれ、欧米から見れば東京の感染者が比較的少ないことから「何でこれで五輪が開催できないんだ」と疑問を投げかけてくるという。だから今回、コーツ氏は気軽に冒頭の発言をしたとみられる。

この日、開催に向け国民に対して必死に具体的な説明を心がけた橋本会長。会見後、コーツ発言が波紋を広げていると伝え聞くと「宣言下でもテストイベントをやったという理由から、そうおっしゃっていたんだけど。その部分だけ切り取られちゃうよね…」と残念そうに言った。【三須一紀】