開幕戦は黒星発進となった古豪・京大の中で、エース候補のQB泉岳斗(2年)がキラリと光るものを見せた。アメフト歴は10年目。第1Qからパスとランを成功させて敵陣へと前進し、ゴール前5ヤードまで迫る場面もあった。良い形で試合を展開し、第2Qでは自らの足で駆け抜け、TDを奪った。

しかし、第3Qで泉がボールをファンブルし、相手がそのままTD。さらに、パスしたボールもインターセプトされ、TDを許した。

痛恨の2本だった。

試合後は「すいません」と号泣。「パスミスもあったし、詰めが甘かった。(失った)35点の内、14点はオフェンスの責任です」と悔しさをにじませた。

アメフトへの思いは誰よりも強い。父親の仕事の関係で、小学生から米ペンシルベニア州で暮らした。近所の友人を通じてアメフトと出会い、魅了された。父親に「チームに入りたい」と懇願し、地元のクラブチームに加入。徐々に頭角を現し、中2の頃にはレギュラーメンバーに入った。しかし、帰国の時期が迫り、日本に戻ってアメフトを続ける道を選択した。

日本では「世田谷ブルーサンダース」に所属し技術を磨いた。高校では、屈指の進学校でもある都立西でアメフトを続け、文武両道を3年間貫き、京大工学部建築学科の門をたたいた。

「私立を倒したい」-

その思いを胸に秘め、今も原動力となっている。

次は甲子園ボウル4連覇を狙う学生王者・関学大と17日に対決(王子スタジアム、無観客)する。

「関学に勝利すれば、まだチャンスはある。こんな(悔しい)思いは、もうしないようにしたい」

チームは甲子園ボウル歴代4位となる6回優勝も、1996年を最後に遠ざかる。四半世紀ぶりの大舞台へ-。古豪京大に、成長著しいスター候補のQBが出現した。【三宅ひとみ】