ロシアによるウクライナ侵攻で、スポーツ選手も武器を手にする状況になった。男子テニスで元世界ランキング31位のセルジー・スタホフスキー氏(36=ウクライナ)はラケットを銃に持ち替える。英国の衛星放送「スカイ・ニュース」は26日(日本時間27日)、同氏のインタビューをホームページに掲載。軍隊経験がないにもかかわらず、ロシアと戦うために予備役に登録したと伝えた。

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スタホフスキー氏は、ツアーで4度のシングルス優勝を誇る。錦織圭とも3度の対戦があり、2勝1敗と勝ち越している元強豪だ。36歳となった今年の1月に引退表明。その1カ月後には、ラケットを銃に持ち替えるとは思っていなかったはずだ。

同氏は、インタビューに「妻と子どもを安全なハンガリーに避難させたら、キエフに戻って戦うつもりだ」と、意を決したように語った。軍隊経験はないが「個人的に銃を持った経験はある」とした。

予備役は非常時に招集され、軍務に服するが「すでに登録も必要でなくなり、意思がある市民なら誰でも参加できるようになった」(スタホフスキー)と、厳しい戦況になりつつある。世界は現時点では経済制裁を科すのが精いっぱいで「欧州も世界の誰も、ウクライナを助けようとしない」と嘆いた。

さらに、同氏はスポーツ界もロシアに抗議を表明すべきだと訴えた。「プーチン大統領はスポーツを国威発揚に使いたい。スポーツ界が抗議を示せば、彼が偉大なロシアを世界に誇ることができなくなる」と唱えた。

女子テニスでは、19年ウィンブルドンで16強入りしたヤストレムスカ(ウクライナ)が、自身のSNSで、家族とともに「地下駐車場で2晩を過ごした。両親は、私と妹をウクライナから脱出させると決めた。母国を愛している」と投稿した。

 

◆セルジー・スタホフスキー(Sergiy Stakhovsky)1986年1月6日、ウクライナ・キエフ生まれ。6歳でテニスを始め、03年プロ転向。08年のザグレブの大会でツアー初優勝を遂げた。13年ウィンブルドン2回戦では、当時、7度の大会優勝を誇るフェデラーを破る大金星を挙げた。ツアー単4度、複4度の優勝。家族は妻と子ども2人。趣味はロシアの古典を読むこと。193センチ、80キロ。