ショートプログラム(SP)首位の三浦璃来(20)、木原龍一(30)組(木下グループ)が日本勢初優勝を飾った。フリーもトップの136・50点を記録し、合計214・58点。世界王者で2位のクニエリム、フレイジャー組(米国)を1・30点差で振り切り、木原は「今日2人で優勝することができて、ものすごくうれしく思います」と喜んだ。

涙が止まらなかった。最終滑走で演技を終え、得点を待った「キス・アンド・クライ」。フリー1位と表示され、場内が歓声に包まれた。2人は抱き合い、喜びを共有した。数分前には氷上で決めポーズをほどくと、肩を寄せ合い、互いに「ごめん。ちょっときついかな」と口にしていた。序盤の3連続トーループは、最初のジャンプで三浦が2回転になった。中盤の3回転サルコーは、木原が「7~8年ぶりぐらいにミスをした」と氷に手をついた。

それでも粘った。終盤のスロー3回転ループ。木原に投げられた三浦は「絶対にやらないと」と降りきった。互いに失敗の痛みを感じ、力を出し尽くした先に表彰台の頂が待っていた。

先人たちが扉をたたき、手をかけ、この日「りくりゅう」が開いた。ペアに転向し、節目の10季目となる木原が冷静に言い切った。

「また新しい扉が開いたのはすごくうれしいけれど、今シーズンが僕たちの終わりでもない。スケート人生はまだまだ続いていくと思うので『その中のひとつかな』と思います。この結果を見て、またペアに挑戦する子が日本で増えてきたら『やっぱり2人が頑張ってきて良かったな』という風に思いますけど、まだまだやめないです」

今月下旬には全日本選手権(大阪・東和薬品ラクタブドーム)を控え、23年3月には今季の集大成となる世界選手権(さいたまスーパーアリーナ)への出場が確実視される。昨季は同選手権2位。三浦が笑った。

「シーズン前半戦での私たちの良かった点は、ミスや合わないことがあっても、最後まで笑顔で滑りきれたことです。練習の積み重ねが演技の自信に変えられる。私たちの、今シーズン前半の成長だと思います」

涙あり、笑顔あり。新たな思い出を胸に、また新しい扉へ進む。(トリノ=松本航)