スケートカナダで初出場優勝し、ファイナル切符を参戦1年目からつかんだ渡辺倫果(20=法政大)が会心の演技を披露した。納得の4位で発進した。

冒頭、トリプルアクセル(3回転半)に挑戦。きっちり着氷した。4分の1回転不足の判定で出来栄え点(GOE)は少々マイナスだったものの「今季初めてショートでアクセルが決まりました。とてもうれしいです」。勢いに乗ってルッツ-トーループの2連続3回転ジャンプ、得意の3回転ループを決めた。

3回転半は、得意のフリーと似たコース取りにNHK杯の後、変えたという。「フリーの1発目の方が確率が高いので。うまくはまった」と、さっそく修正が利いた形だった。

演技後は、右拳を握ってガッツポーズ。両腕でもガッツ。笑顔で中庭健介ヘッドコーチのもとへ戻り、キス・アンド・クライで72・58点と自己ベストを更新すると、うれしい悲鳴を上げて喜んだ。9月にチャレンジャーシリーズを初めて制したロンバルディア杯での66・83点から5・75ポイントも上乗せした。

国際オンライン取材では3年半のカナダ留学で体得した流ちょうな英語を披露し「初めてのGPファイナルで自己ベストを出せて良かったですし、今後の自信につながると思います」と語った。

現地の取材エリアでも「72点という、よく分からない点数が出た」と大笑い。試合前は、同じ千葉・南船橋で練習する妹分のジュニア女子、中井亜美(14=木下アカデミー)の応援で「半泣き」になっていたといい「ショートでは花織ちゃんの腕をわしづかみにして震えていたので、その緊張に比べたら、亜美ちゃんの応援に比べたら自分の緊張はたいしたことなかったかな」とまた笑った。

3歳だった06年にトリノ五輪(オリンピック)で荒川静香さんが金メダルに輝いた姿に憧れ、始めたスケート。その舞台となったパラベラ競技場で「ちゃんとした大会では初めてのSPノーミス」を遂げ、フリーへ向かう。

報道陣から「この点数が出ても変わらずにフリーを迎えられるか」と聞かれると「変わります(笑い)」と即答。「ただ、欲を言うなら片手(5位以内)に入りたいな」と言いつつ「でも別に、ボロッと転んで6位になってもいいし、背負う必要はないかな」と無心を強調した。

そういう時こそ、何かは起きる。ロンバルディア杯もNHK杯もフリーで逆転し、初優勝。3回転半は1本の予定で「頑張ってまとめます」とプログラムの完成度で勝負する。