不撓(ふとう)不屈の心で、日々歩み続ける。

今季のグランプリ(GP)シリーズ第2戦スケートカナダで初出場初優勝を収めた渡辺倫果(20=法政大)が129.97点をマークし、2位に入った。

冒頭のトリプルアクセル(3回転半)で転倒したが、その後はループ-トーループの連続3回転ジャンプを決めるなどし、立て直した。ただ、演技後は「アクセル2本構成でいくつもりだったんですけど、失敗してしまったので、ループ-トーへ移行しました」と悔しそうに説いた。

今はどうしても2週間前を思い返す。GPファイナル4位の立場で迎えたものの、12位となった全日本選手権。

「ほんとに、ほんとに悔しい思いをしました」

ショートプログラムの後には、取材エリアで涙を流した。

そうした中、今季の活躍が評価され、2月の4大陸選手権(米コロラドスプリングズ)、3月の世界選手権(さいたまスーパーアリーナ)の日本代表に選ばれた。選考基準に則った選出だったものの、心には戸惑いのようなものが広がった。

「いくら(選考基準に)当てはまっていたとはいえ、全日本12位の人が行くいうのは…。(周囲では)意見というよりも、混乱のほうが大きくて」

私でいいのだろうか。揺らぐ思いを救ったのは、温かいエールだった。

「自分が思っている以上に、応援してくださる声のほうが多かったんです」

思えば今季は、ファンからの声に救われている自分がいた。

「GPシリーズの演技を見て、一目惚れしました」「生きる元気をもらいました」

メッセージや手紙が届くたびに、勇気づけられていた。

エールに応えるためには、最善の準備を尽くすしかない。時間がたつにつれて、そう思うようにもなった。

「今はマスクをしたまま、フリーのプログラムを滑ったりもしています」

4大陸選手権が行われる米国のコロラドスプリングスは、標高1800メートルの高地にある。酸素が薄く、呼吸がしづらいかもしれない。想定できることに対し、可能な限りの対策を講じている。

「マスクをつけると呼吸がしにくいので、筋肉に酸素がいかなくて。どうしても足が震えてきたり、動かなくなったりするんです」

そう笑って明かす渡辺の体は、実は筋肉痛に襲われていた。インカレには、痛みを抱えて出場した。

それでも、つとめて明るく振る舞い続ける。「ただひたすら練習です」と繰り返す。

元日の初詣では、絵馬にこう書き込んだ。

「不撓(ふとう)不屈の精神で練習をする」

エールに応えるために。渡辺は強い使命感を胸に、今の自分と向き合っている。【藤塚大輔】