激戦の男子200メートル平泳ぎで、元世界記録保持者の渡辺一平(27=トヨタ自動車)が2大会ぶりの五輪代表に内定した。2分6秒94で優勝し、22年世界選手権銀メダルの花車優(イトマン東京)が2分7秒07で続いた。“鉄道マン”深沢大和(東急)は、2分7秒75で派遣標準記録(2分8秒48)突破も、3位で無念の涙を流した。

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1度は頭を下げて取材エリアを通り過ぎた深沢が、報道陣の前に戻って言った。「すごく悔しいけれど、全力で泳いだし(渡辺)一平さんと(花車)優くんには、僕らの分も頑張ってほしいなと思いました」。声は震えていた。

残り50メートル。1秒程度の差がついた渡辺、花車を懸命に追った。その姿に歓声がうずまき、最後は2位の花車と0秒68差に詰めた。2分7秒75。派遣標準を切ったが、上位2人に与えられる内定は出なかった。

昨春に入社した東急の理解を取り付け、半年間は水泳に専念できた。約束の期限は今大会。パリ五輪行きが決まれば、夏まで延長の約束だった。引退を覚悟して全てをぶつけた。1分の取材。最後は涙声だった。

「すごく幸せな時間でした。負けちゃったけれど、僕のこれからの人生、ここで挑戦したことは、すごく大きな意味があったと思う。また、頑張りたいです」

言葉を絞り出すと「ありがとうございます」と言い残して去った。後ろ姿は、りりしかった。【松本航】