体重無差別で争う全日本女子選手権で、瀬川(旧姓秋場)麻優(26=ALSOK)が初優勝を果たした。

東京代表として初戦の2回戦から4試合を勝ち上がり、迎えた決勝で、前回大会準優勝の児玉ひかる(25=SBC湘南美容クリニック)相手に指導4の反則勝ちを収めた。

快挙に導いたのは、愛の力だった。「勇気! 優勝したよ!」。場内インタビューで、笑顔で応援席を向き、夫で柔道家だった瀬川勇気さん(26)へ優勝を報告した。「本当に愛しているよ! ありがとう!」。同時に愛の言葉もNHKの全国生中継で伝えた。

ともに北海道の高校時代から付き合っていたが、1度は破局。新型コロナ禍の20年3月に復縁し、再び交際して3年の昨年3月にゴールインした。

「北海道を拠点にしたい」

その願いをかなえてくれたのが、夫だった。早稲田大の柔道部だった勇気さんは、全国転勤のある銀行員を6月に辞め、札幌市の人材派遣会社へ転職。2人の故郷に拠点を戻した上に、研究熱心な夫から組み手などのアドバイスを受け、週末は2人で練習している。

平日は麻優の母校・北海高で、土曜日は夫の東海大四(現東海大札幌)高で練習し、日曜は2人の時間。私生活も全て支えてもらっているから、専念できる。「感謝の気持ちでいっぱい」。パートナーに支えてもらいながら、柔の道に向き合っている日々だ。

結婚前の18、22年に講道館杯で優勝するなど実績は豊富だが、この大会は5位止まり。昨年、結婚翌月だった本大会でも児玉に敗れて5位。あまりの悔しさに大泣きした。

「今年こそは優勝のチャンス」

4強の壁を初めて破る準々決勝突破で勢いに乗り、準決勝も旗判定で勝利。決勝は、昨年自身を倒して2位まで上がった110キロの児玉と再戦。10キロ重い難敵にも力強く攻め込み、反則を誘った。

出場6回目にして「女子日本一の大会で1番になれてうれしい」。飛びきりの笑みがはじけた。

今夏のパリ五輪(オリンピック)出場はならなかったが、今はもう1つ、先を見据える。「まだチャンスはある。ロスまでは頑張る」と、目指すは28年ロサンゼルス大会だ。スタンドで涙を流して喜びを分かち合った夫とともに4年後の夢舞台へ走り続ける。【飯岡大暉】