昨年9月に現役を引退したテニスの杉山愛さんの母で、コーチも務めた杉山芙沙子さん(60)が27日、早大大学院スポーツ科学研究科修士課程1年制に合格したことが分かった。芙沙子さんは愛さんを世界トップ10に導いた経験をこれからの指導者に残すため、自らの指導法に学術的な理論を加えたいと受験を決意。見事、27人の合格者に名を連ねた。

 還暦、60歳からの手習いで芙沙子さんが見事、早大大学院の難関を突破した。「自分が今まで得てきた貴重な経験を、プロフェッショナルとしてテニス界に貢献したいという願いから今回、大学院に行こうと決断しました」。専攻はトップスポーツマネジメントコースだ。

 早大広報課によると、年齢のデータはないが「60歳での院生は少ないでしょう」。34歳まで現役を続け、世界のテニス界で「鉄人」の異名を取った娘の愛さんも、母の60歳での合格には「いくつになっても飽くなき探求をする母にはいつも頭が下がる」と驚きだ。

 これまで世界で培った指導の経験を、理論立てて将来につなげたいと3年前から大学院受験を考え始めた。しかし、愛さんが現役中はコーチ業が多忙で断念。昨年、愛さんが引退したことで「自分たちが歩んできたことが、少しでも後輩の役に立つようまとめていきたい」と受験を決心した。

 受験のために提出する4000字の研究計画書と2000字の社会人履歴リポートをわずか5時間で書き上げた。研究計画書は、大学院で研究する内容を、どう実現するかを具体的、詳細に書いたもの。普通でも3~4日かかるというが「年なので、一気に書かないと忘れてしまうから」と笑った。23日の面接を経てこの日、合格が決まった。

 芙沙子さんはコーチ時代から勉強家として知られていた。テニスは趣味でプレーしていただけ。愛さんと世界を転戦することで、体の使い方などの運動力学を独学して世界のトップに育てた。

 愛さんと2人で立ち上げた「パームインターナショナルスポーツクラブ(神奈川県茅ケ崎市)」では、スポーツショップやクラブ運営などでスポーツビジネスの分野にも進出。湘南ベルマーレとフットサルスクールの提携もしている。

 同大学院では昨春に合格した元パイレーツ桑田真澄氏の後輩になる。修了には30単位の取得と修士論文の提出などハードルは高いが「本当に楽しみ。桑田さんとも今度会えるみたいだし」。旺盛な学習意欲で芙沙子さんが日本のスポーツ界に新しい道を切り開く。【吉松忠弘】