日本の「顔」がようやく決まった。日本オリンピック委員会(JOC)は18日、ロンドン五輪の日本選手団の主将に陸上男子やり投げの村上幸史(32=スズキ浜松AC)、旗手にレスリング女子の吉田沙保里(29=ALSOK)を決めたと発表した。ともに初の大役。55キロ級で五輪3連覇に挑む吉田は「ジンクスを破って金メダルを」と熱い意気込みを明かした。

 吉田が故郷に錦を飾った。生まれ育った三重・津で行われた壮行会。鈴木英敬三重県知事(37)が「旗手に決まったようです」と発表すると、会場は大きな拍手に包まれた。

 吉田

 大役を任されて光栄です。旗手はやりたいと思っていました。先頭でかっこいいし、気持ちよさそうだな、と思って見ていました。一番先頭で歩くのは幸せなこと。胸を張って堂々と歩きたいです。

 レスリング女子55キロ級で五輪3連覇へ挑むだけに、恩師の栄和人・女子強化委員長によれば4月には主将の打診もあったという。史上初の「女子主将」こそ辞退したものの、本人も熱望した旗手に決定。「主将と旗手は活躍できない」というジンクスを吹き飛ばし、00年シドニー五輪の柔道井上康生以来となる「旗手でも金」へ闘志を燃やす。

 吉田

 ジンクスで金メダルは取れないと言われるけど、必ず取りたい。全部こなして、絶対に勝つんだと心に決めています。

 テニスのシャラポワがロシアの旗手と聞いた吉田は「それだけ旗手は有名な選手なんですね」。5月にW杯で敗れたショックも「もう吹っ切れました」。五輪の公式行事にすべて出席するため、8月1日の出発予定を7月25日に変更する。ようやく決まった日本の「顔」は、心身ともに力強い柱になる。【近間康隆】

 ◆吉田沙保里(よしだ・さおり)

 1982年(昭57)10月5日、三重・津市(旧一志町)生まれ。三重・久居高-中京女大(現至学館大)-ALSOK。アテネ、北京五輪の女子55キロ級金メダリスト。世界選手権も05年から7連覇中など9度優勝。156センチ。血液型O。

 ◆五輪選手団の主将と旗手

 日本が主将と旗手を決めたのは28年アムステルダム大会から。88年大会からは00年シドニー大会を除いて主将は男子、旗手は女子が恒例。村上は陸上からの主将としては96年アトランタ大会の谷口浩美(マラソン)以来3人目で、フィールド競技からは68年メキシコ大会の菅原武男(ハンマー投げ)以来。吉田はレスリングからの旗手としては男女合わせて3人目で、女子では04年アテネ大会の浜口京子以来。過去に女性旗手が金メダルを取ったことがない。柔道から主将、旗手とも出なかったのは、76年モントリオール大会以来。