<高校ラグビー:国学院久我山10-7西陵>◇2回戦◇30日◇花園

 過去全国優勝5回を誇る名門、東Bシードの国学院久我山(東京第1)が冷や汗発進した。西陵(愛知)に前半10点を奪ったが、後半追い上げを許し、辛うじて逃げ切った。昨年からの度重なるけがとインフルエンザに泣いたフッカーの須藤拓輝(たくる=3年)主将は、フル出場して2年越しの花園勝利をつかんだ。

 試合終了後、主将の須藤は、勝利への安堵(あんど)と不満、両方の色を浮かべていた。チームはFW勝負に出た相手に対抗し、機動力のある自慢のBK陣に展開してカウンターの2トライ。全国制覇経験を持つ西陵の追い上げからどうにか逃げ切った。主将として、声を張り上げ周囲を盛り上げたが、一方で2回のフットアップなどチームの危機にミスもしてしまった。

 「緊張や興奮はありました」。花園の常連校にいても、初戦には思い入れがあった。昨年の大会直前、当時2年生ながらレギュラーだった須藤は、合宿練習中に鎖骨を骨折した。竹内監督の「リーダー格になりうるやつ」という判断で大阪に同行。出場不可を承知の上で仲間の準々決勝敗退までを見守った。「出られないのが一番悔しかった」。

 主将として奮起した本年度。8月の夏合宿で左足首を剥離(はくり)骨折した。10月には肉離れも併発し、11月の東京第1決勝は後半26分からのわずかな出場。さらに、けがが治った今月中旬は、4日間の奈良遠征でチームに新型インフルエンザがまん延、須藤も40度近い熱を出した。入学してから人の倍のご飯を食べ、20キロ増の90キロまで増やした体重も6キロ減。日大の人工芝グラウンドを借りての直前練習も後半3日間しか参加できず、十分な調整時間が取れなかった。

 本調子ではない。それでも、スクラムの最前線でリーダーシップを発揮し、守備でも名前の拓輝(タックルに由来)にふさわしい攻めの姿勢を貫いた。

 2年越しの思いをぶつけた花園初戦は、勝利とはいえ不完全燃焼。「今日の試合は40点」。自己採点の厳しさは、意識の高さの表れだ。3回戦で対戦する大阪朝鮮高(大阪第3)には、夏合宿で敗れている。「西の学校だからとかじゃなく、大阪朝鮮だから負けたくない」。主将の熱い思いは、今年もチームを高みに導くはずだ。【鎌田良美】