ラグビー日本代表(世界ランク10位)は6日、南アフリカ(同5位)と埼玉・熊谷ラグビー場で対戦する。20日に開幕するワールドカップ(W杯)前最後のテストマッチへ、5日は会場で最終調整。今季代表戦未出場ながらベンチ入りしたWTBアタアタ・モエアキオラ(23=神戸製鋼)は、精力的に体を動かした。これまで対アジアにとどまった185センチ、114キロの“秘密兵器”が、歴史的勝利再現の使者になる。

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袖無しのシャツから伸びる太い腕に、大きなストライド。185センチ、114キロのモエアキオラは、大外のライン際でひときわ目立つ。日本で珍しい大型WTBは、4年前のW杯で歴史的勝利を挙げた南アフリカとの対戦へ「(見せ場は)フィジカル。プレッシャーはあるが、準備はできている」と自信をみなぎらせた。

史上初W杯8強へ、最後のピースだ。モエアキオラは15歳でトンガから来日。東京・目黒学院高を経て、今春卒業した東海大では外国人初の主将を務めた。「僕は日本語が本当に下手。でも言ったことを分かってくれて、助けてもらってばかりだった」。16年アジア選手権では日本代表として3キャップ獲得。だが、以降の出場経験はなく、静かに覚醒の時を待っていた。

W杯代表入りのきっかけは、今春のスーパーラグビーだった。ニュージーランド(NZ)の「チーフス」で猛アピールし、6月の宮崎合宿に招集された。幼少期から元NZ代表の伝説的WTBロムーに憧れ、テレビにかじりついた。195センチ、119キロで100メートル走10秒台だった怪物の背中を追い、U-20(20歳以下)日本代表では同南アフリカ代表からの3トライで「ロムーの再来」と言われた。NZではタックルや、ボール攻防戦の技術を身につけ「基本をしっかりやることが、いい選手につながる」とバランスが良くなった。

日本の両WTBは、現時点でスピードにたける福岡と、キックも操る松島が1番手。モエアキオラの力は、ジョセフ・ヘッドコーチさえも「他の選手は3年間見てきているので、実力は分かっている。彼がどれぐらいできるか、楽しみにしている」と測りかねている。起用は勝負どころの後半が濃厚。日本の秘密兵器は「通用する? やってみないと分からない」と穏やかに笑い、力試しの時を静かに待っている。【松本航】