大麻取締法違反(所持)で逮捕され、日本相撲協会を解雇された元幕内若ノ鵬(20=本名・ガグロエフ・ソスラン)が29日、都内で行った「八百長告発会見」で暴走した。大相撲に八百長があることを声高に訴え、加えて、大麻を吸引した力士、親方がほかにいると一方的に主張した。いずれも物的証拠はなく、「自分が目撃者」と話した。会見を開くことは同協会に「解雇無効」を求めるために契約した代理人にさえ告げておらず、近い関係者も「金が目的だ」とあきれる始末だった。

 マゲに着物。力士時代のままの姿で、元若ノ鵬は大相撲の八百長問題を告発し始めた。日本語であいさつし、続いて用意した文書をロシア語で読み上げた。

 元若ノ鵬

 私は16歳で日本に来て相撲界に入り、強くなりたい、大関、横綱になりたいと思い、頑張ってきました。しかし、やっと幕内に上がれたと思ったら、無理やりにアンフェアな取組を強いられ、お金を渡されました。それを断ったりすると「かわいがりをするぞ」と言われました。

 さらには、自身の逮捕(後に起訴猶予)で始まった大麻問題にも触れた。

 元若ノ鵬

 協会は「大麻など吸っていない」と話している露鵬、白露山に解雇という大変重い処分を下しました。にもかかわらず、本当に大麻を吸っている力士や親方には、何の処分がされていないのはどういうことなのか、と思います。

 いずれも物的証拠はないが、「私が目撃者で、証拠です」と訴え続けた。八百長の相手、大麻を吸っているという力士名などについては「裁判で話す」と繰り返した。

 会見は、昨年初場所後から大相撲の「八百長疑惑」を報じ、同協会から3件の名誉棄損訴訟を起こされた「週刊現代」(講談社刊)側が設定した。元若ノ鵬は「(被告の)週刊現代側の証人として法廷に立つ」と発表。被告側は、協会側の証人として横綱朝青龍が法廷に立つ10月3日の口頭弁論で、元若ノ鵬を証人申請し、裁判長に認められれば次回期日で元若ノ鵬を証人出廷させるという。

 だが、この会見には「身内」も困惑していた。元若ノ鵬は現在、「解雇無効」を求めて同協会を提訴しているが、代理人宮田真弁護士は「昨晩に知り、会見前にようやく電話がつながったが『決まっちゃったから(会見中止は)ダメ』と言われた」と残念がった。同弁護士によると、元若ノ鵬は、9月8日に処分保留のまま釈放される際、預金通帳には残高806円しかなかったという。

 弁護費用やハイヤー代、通訳を雇う費用は、事務所が立て替えている状態。本人は告発の目的を「大好きな相撲をただし、元の姿に戻したい」と説明したが、かつての後見人で会見場にも姿を見せた出版プロデューサーの高須基仁氏までも「金だよ。今、アイツは生活するのも大変なんだ」と突き放した。

 会見終了後、元若ノ鵬は宮田弁護士に電話をかけて「頑張りました。これで有利になりますか?」と問いかけたという。同弁護士は「なるわけない。(解雇撤回を求めて提訴中の裁判を)おりるのか。朝青龍の裁判のことを理解しているのか」と激怒。しかられた元若ノ鵬は「全然知らない。でも、宮田先生の言うことは正しいと思うよ」と返したという。同弁護士いわく「本人は、会見すれば相撲協会に早く戻れて地位確認を求める訴訟にも有利になると誤解している」とし、証人出廷回避も含めて元若ノ鵬と話し合いを持つという。元若ノ鵬の突然の告発は、現状に思い詰めた上での行動だったようだ。