高校野球100年目の夏となった甲子園大会が前日20日、東海大相模(神奈川)の優勝で幕を閉じた。

 2回戦の途中、13日から決勝までの22試合を甲子園で取材した。その中で幾つか忘れられない言葉がある。

 「いい試合ではダメ。勝たないと意味がないぞ、と選手に言い続けました」

 九州国際大付(福岡)の楠城徹監督が2回戦の大阪偕星学園戦後に話した言葉だ。追いつ追われつのシーソーゲーム。最後は10-9でサヨナラ勝ちした。楠城監督は元プロ出身。結果がすべてのプロ野球で生きてきた人間ならではのコメントだった。

 ただ、試合には勝ったものの反省点や課題が多かったようで「怒ってばかりで勝ったかどうか分からない。プラス志向でこういうゲームを終わってはいけない。修正すべき点はまた練習して直さないと。ウチの選手はほとんどが、上(大学、社会人、プロ)に行って野球を続ける。技術の習得はあきらめずやってほしいと思ってます」。

 また指導の上で言い続けているものに「ゴロよりフライを打て」がある。「無死ならゴロでもいいが、1死一塁で強いゴロを打ったら併殺で終わり。それならフライを打った方がいい。転がせば何が起こるか分からないと言うが、甲子園に出てくるようなチームはまずエラーしない。長打の可能性があるフライを打った方がいいと思います」。

 九州国際大付は3回戦で作新学院を破り8強入り。準々決勝で早実に敗れ、楠城監督の最初の夏が終わった。

 「チーム全体とすれば力負け。この甲子園でやって、勝って校歌も歌えたし、負けて校歌を聞く悔しさも知りました。また頑張っていきたい。九州に帰って、またしっかり練習して。体に力がないといけないということを再確認できた。選手の顔も、昨日と今日では違う。やれるようになったかなと思ったら、そうじゃない。1日1日違う。元プロの出身として、自分のように甲子園の舞台に立てる人もいるし、この後に続く人もいるし、しっかりやっていこうと思いました」。

 今夏、甲子園出場を果たした元プロ出身監督は楠城監督と宮崎日大・榊原聡一郎監督の2人。新制度の導入で今後は元プロ監督率いるチームが甲子園に出場するケースが増えるのではないか。

 そのほか印象に残ったコメントは以下の通り。

 「甲子園がこんなに楽しい所だと思わなかった。テレビの中の世界を味わえて良かったです」(鶴岡東・竹本大輝捕手)

 この日8月15日は彼の誕生日だった。第1打席に入るとアルプス席からハッピーバースデーの演奏と大合唱。ネット裏のファンからも大きな拍手が起こり18歳の誕生日を祝ってもらった。試合には敗れたが一生忘れられない誕生日になったはずだ。

 「1-0の試合が一番いい試合だと選手に言っている」(花咲徳栄・岩井隆監督)

 鶴岡東に1-0で勝利。花咲徳栄は準々決勝で優勝した東海大相模と大接戦を演じるなど今大会を盛り上げたチームの一つだった。

 「監督人生で初めての敬遠策」(東海大相模・門馬敬治監督)

 準々決勝・花咲徳栄戦で終盤のピンチで151キロ左腕の小笠原に敬遠を指示しピンチ脱出。サヨナラ勝ちにつなげた。決勝に駒を進める中で最も苦しんだゲーム。この試合を乗り越えたことが優勝の要因の一つなのは間違いない。仙台育英の怒濤の反撃や完全アウェー状態にも臆することはなかった。

 同じ日、門馬監督はこうも言った。

 「甲子園は人を育てると言われますが、、去年(初戦敗退)は厳しさだけを知って帰った。公式戦を数多く経験することで成長するのは間違いないと思いますが、甲子園が人を育てるとは、まだまだ自分は思えません」。

 この夏、神奈川大会から12個の白星を積み重ね頂点に立った。東海大相模も、門馬監督自身も間違いなく一皮むけたのではないだろうか。