元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。9回目は「プロ野球開幕1カ月の通信簿」です。

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 3月25日にプロ野球が開幕してから早くも1カ月が過ぎた。下位にいるチームもまだまだ挽回は十分に可能な時期だが、交流戦までがV戦線の第1フェーズか。チームの強みはさらに生かし、課題は糧とし補強したり、改善したりすべきだろう。あくまで個人的に見た状況を5段階評価してみた(4月27日現在)。

※花丸=文句なし、◎=すばらしい、○=良い、△=もう少し、×=早急な改善を


◆パ・リーグ

【1位 ソフトバンク=攻撃力◎、投手力◎】

<攻撃力>もともと戦力が充実している上にスキのない走力、目立った長距離砲がいるわけではないが、ヤフオクドームも昨年からのテラス席設置で球場が若干狭くなったことも好影響か。盗塁24、本塁打17本はリーグトップタイ。打撃10傑に3人、昨季トリプルスリーの柳田は打率こそ2割4分1厘だが、出塁率は西武秋山に次ぐリーグ2位の4割5分、選球眼が良くなり出塁率が高いため、相手投手はストライクゾーンでの勝負となるだけに、打率も上昇するだろう。

<投手力>バンデンハークのデビュー13連勝を皮切りに層の厚さはこの上ない状況。摂津が本調子でなく2軍調整中だが、東浜を登板させたり、本来先発の寺原を中継ぎ起用したりと今後のシーズンを見据えた起用法には余力が感じられる。

 全体的にチームは本調子でないように見えるものの、その状態で1位。エンジンが掛かれば怖い。

【2位 ロッテ=攻撃力◎、投手力◎】

<攻撃力>チーム打率2割5分8厘はリーグ4位も、得点は119点でソフトバンクを抑えてリーグ1位。デスパイネも復調傾向、ナバーロもそこそこ打つ。打線にソツがない。

<投手力>中継ぎの安定感は12球団NO・1でしょう(ひいき目ではありません)。けがで泣いてきた内の復活は大きい。加えて藤岡、松永、益田、西野。2軍調整中の大谷が帰ってきたらブルペンはさらにパワーアップする。中継ぎが強いと接戦に強くなる。先発陣がちょっぴり薄いのが気掛かりか。

【3位 日本ハム=攻撃力△、投手力△】

<攻撃力>田中賢が打率10位にいるが、3人ぐらい10傑に入ってこれれば得点力は上がる。チーム打率はリーグ5位(2割5分7厘)106得点も同5位。得点が少ない中、スクイズで点を奪うなど監督も苦肉の采配。打線が本調子でないだけに、伸びしろは大きい。

<投手力>大谷が好投しながらも勝ち星がつかないと波に乗れない。防御率2・27は悪くない数字ながら5試合登板で0勝2敗。大谷が勝ち始めれば、相手エースに黒星がついていくだけに上位との差は詰まる。大谷の0勝=チーム3位の現状。

【4位 西武=攻撃力◎、投手力△】

<攻撃力>おかわりくんがけがでまだ本調子ではないが、秋山、メヒアを始めバイプレーヤーも高打率。特にメヒアは2冠王。打線に爆発力をひめる。打撃10傑に3人、チーム打率2割7分1厘はリーグトップ。17本塁打もリーグトップタイ。

<投手力>失点が121点でリーグワースト。点を取っても取られすぎては意味がない。岸の離脱は痛い。中継ぎが目立っていない。岸の代わりは菊池雄星あたりだろうが、27日のロッテ戦でも6回に5失点し突然崩れた。1勝4敗では物足りない。さらに外国人投手の活躍もイマイチか。

【5位 楽天=攻撃力○、投手力△】

<攻撃力>開幕ダッシュはすばらしかったが、けが人が多すぎる。今江に、藤田に…。けが人の早期復帰が待たれる。メジャー通算162発の新外国人ゴームズは帰国してしまったし、チーム本塁打はリーグワーストの9本。ベンチがしんみりしている状態か。

<投手力>則本3勝を筆頭に美馬、釜田と踏ん張っていると思う。先発降板後、松井裕につなぐまでの中継ぎ整備が課題。防御率4・26(リーグ5位)は少し悪すぎる。

【6位 オリックス=攻撃力×、投手力×】

<攻撃力>糸井が1人で頑張っているように見える。もともと外国人頼みのチーム。それが機能していない。ツイてないときは重なるものだ。助っ人モレルは本塁打1本だが、21日の楽天戦で放った2発の本塁打が降雨中止で幻に。悪夢のバースデーとなった。

<投手力>けん引役を期待された金子が0勝2敗で防御率5・85、西が2勝3敗で防御率7・62とスタートダッシュに失敗。2014年にリーグ2位になった際は中継ぎ陣(比嘉、佐藤達、馬原、平野ら)が整備されていた。チーム防御率4・99はコメントしようがない。


◆セ・リーグ

【1位 巨人=攻撃力○、投手力は花丸】

<攻撃力>新外国人ギャレットの打撃が少し物足りないが、チーム打率2割5分4厘(リーグ5位)98得点(リーグ4位)で勝っている。坂本は3割超だが長野、立岡、村田ら主力級も2割9分前後とこれからの爆発に期待。阿部の復帰が待たれるがクルーズの加入が大きかった。坂本の体調不良もクルーズ、片岡の二遊間でカバリング。

<投手力>投手10傑に防御率1位0・68の菅野を始め、3人が入る充実ぶり。チーム防御率は12球団で唯一の2点台(2・83)は文句なし。得点こそ少ないが失点も79と12球団1番の少なさ。投手力がズバ抜けている状態。

【2位 中日=攻撃力◎、投手力○】

<攻撃力>ビシエドの破壊力がすさまじい。打率3割5分6厘、本塁打8本、打点21とここまで打つとは申し訳ないが想像できなかった。ビシエド1人で勝った試合もある。主力の平田、大野の故障をカバリングしている。平田はけがから復帰したが、状態が上がってくれば、強竜打線はさらに怖い存在に。他球団にとってみればビシエド対策が急務か。シーズン通して活躍しそうな気配だ。

<投手力>大野の早期復帰が待たれる。チーム防御率3・68はリーグ3位だが、中継ぎ陣の整備が今後の課題か。

【3位 広島=攻撃力は花丸、投手力△】

<攻撃力>とにかく打つ。チーム打率2割8分3厘、25本塁打、130得点はリーグトップ。新加入したルナのおかげで刺激があったのか、エルドレッドのパワー打撃が復活。現在本塁打王で打率も3位と絶好調。けがで戦列を離れているルナが復帰すれば打線はさらに厚みを増すだろう。

<投手力>野村が27日のヤクルト戦で完封し投手10傑に入ってきたのは好材料。それまでジョンソン、黒田の2枚看板で支えていた。チーム防御率3・72はリーグ4位だが、3本柱がきっちり回れば防御率も改善される。ただ、中継ぎ以降の整備が今後の課題か。

【4位 阪神=攻撃力○、投手力△】

<攻撃力>ルーキー高山が頑張っている。即戦力で入団し、実際に即戦力で貢献できる選手は一握りだ。江越、横田ら若手の奮闘も目立つ。マートンに代わり加入した助っ人が今の段階では期待外れ。西岡のけが、特に鳥谷のスランプが気になる。打率2割5分6厘でようやく上昇気配も見えるが、鳥谷が本調子になれば、気を吐く福留らと打線の主軸に核ができる。キーマンは鳥谷。

<投手力>先発陣は評価している。岩貞は直球のキレといいマウンド度胸といい、楽しみな存在だ。中継ぎ以降が少し層が薄いのが気掛かり。今さらだが、呉昇桓の穴が痛い。終盤で落とした白星もいくつか。

【5位 ヤクルト=攻撃力◎、投手力×】

<攻撃力>チーム打率2割7分8厘はリーグ2位と打ってはいる、しかし得点が107点(リーグ3位)と効率が悪い。阪神は打率2割5分6厘で121得点入っている。得点圏打率が悪いのか、無死から走者が出ないのか。盗塁も15個(リーグ3位)でそこそこ数字上は悪くないのだが「拙攻」にハマっている状況。ただ、昨季のリーグ王者、1つ歯車がかみ合えば数字は悪くないだけに攻撃力が改善される可能性も大きい。

<投手力>12球団唯一の防御率5点台(5・43)は、あり得ない…。活躍している投手が小川(2勝1敗)しかいない。といっても投手成績で防御率14位の3・58。先発、中継ぎ含めた全整備が課題となる。

【6位 DeNA=攻撃力×、投手力◎】

<攻撃力>12球団ワーストのチーム打率2割2分7厘は低すぎる。梶谷のけがが痛かった。ロマックも泣かず飛ばす。ロペスもスタメンを外された。助っ人が完全に不発。新外国人獲得へとニュースを見たが、そうなるのも仕方がない。筒香頼みの状態だ。乙坂ら若手も少し出てきたが、現段階では筒香の前に走者を出すことが一番か。梶谷の早期復帰を願うばかり。

<投手力>チーム防御率3・19は12球団で巨人に次ぐ2位。井納、新人今永が防御率でトップ5におり奮闘している。かみ合っている巨人ばりに打線の絡みが良くなれば投手陣がいいだけに、まだまだ挽回の余地がある。


 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「サトのガチ話」)