「北の国から~2017希望」。そんなタイトルがぴったり、はまる。来春の第89回選抜高校野球大会(来年3月19日開幕・甲子園)の21世紀枠候補9校が16日、日本高野連から発表され、北海道地区は今秋の全道大会で8強入りした富良野が選ばれた。大会直前に襲った大型台風で、ドラマ「北の国から」(フジテレビ系列)の舞台となった町は甚大な被害を受けた。ボランティア活動で復興を支えたナインは、夢舞台への希望を胸に、吉報を待つ。

 困難を乗り越えた富良野ナインの結束が、夢舞台への希望をつないだ。ドラマ「北の国から」のロケ地として全国的に知られる小さな町に、うれしいニュースが舞い込んだ。放課後の練習前、益田昇悟校長(59)から、来春のセンバツ21世紀枠候補校になったことを告げられると、部員36人の表情が引き締まった。「正式に決まったわけじゃないけど、信じられない」。宇治修汰主将(2年)は、驚きを隠せなかった。

 つなぎの打線と堅実な守備で激戦の旭川地区を勝ち抜き、6年ぶりに出場した秋季全道大会では8強入り。そこに至るまでは苦難の連続だった。地区予選直前に相次いだ大型台風の影響で、空知川が決壊し、南富良野町を中心に、大きな被害を受けた。同町に住むエース坂本大輔(2年)と今野響暉外野手(2年)は、床下浸水した自宅を離れ、近くの小学校に避難。ボランティアとして泥の撤去作業を手伝った。難しい調整を強いられた坂本だったが「野球が出来て本当に感謝している」。現在も仮住まいだ。

 家族3人とともに濁流から逃れ、車庫の屋根で孤立した星野瑞稀外野手(1年)は「命が危ないと思った」と死を覚悟した。携帯電話の電池は残り2%。役場に待機していた父と連絡が取れ、約3時間後にヘリで救助された。生きる喜びにあふれる今「甲子園は夢の場所。今度は僕たちが、町の人たちに元気を与えたい」と意気込む。

 午前7時に氷点下22・4度を記録した寒さにも負けず、ナインは屋外に飛び出した。「間違って(センバツ出場校に)選ばれてからでは遅い」(伊藤彰浩監督)と、今年から取り入れた真冬の外野ノックで、実戦感覚をとぎすませる。富良野のチャンステーマは「打線が勢いづく」と宇治主将も太鼓判の「北の国から」。春夏通じて、初の聖地へ。来年1月27日の選考委員会で、候補9校の中から、21世枠3校が決まる。【中島宙恵】

 ◆富良野 1926年(大15)に創立した高等女学校が前身。50年(昭25)の統合により共学化。生徒数461人(女子274人)。全国大会出場経験のあるラグビー部や書道部など、部活動も盛ん。OBにカーリング女子の元日本代表、目黒萌絵。週1度「表現」の授業があり、脚本家の倉本聡氏が主催する演劇創作集団「富良野GROUP」の俳優らが指導することも。所在地は富良野市末広町1の1。益田昇悟校長。