侍イズム注入効果だ。広島九里亜蓮投手(24)が4日、秋季日南キャンプの紅白戦に先発し、2回を投げ無安打無失点に抑えた。10月にはみやざきフェニックス・リーグで面識のない楽天則本から受けた教えを実践。停滞感を打ち破ろうとしている。秋季キャンプ初実戦で好結果を残し、3年目の飛躍に大きな1歩を踏み出した。

 九里は先頭の野間をツーシームで空振り三振に取ると、最後は田中を真っすぐで見逃し三振に仕留めた。紅白戦で好投したマウンド上でも、紅白戦後の取材対応でも堂々としていた。好投の裏には、侍ジャパンの投手から授かったアドバイスがあった。

 「フェニックス・リーグで楽天と試合をしたときに則本さんに質問させてもらった。手先で小細工してしまうところがあったので、どういうイメージを持って腕を振っているのか。練習でどういうことをしているのか聞いた」

 シーズン終了後、他球団の投手の動画をチェックしているときに、則本の大きな腕の振りにくぎ付けとなった。フェニックス・リーグで、プレミア12へ向けた調整中の則本がいる楽天と対戦。面識はない。だが、迷いはなかった。あいさつすると、思い切って質問をぶつけた。約30分。1学年上の侍右腕からのアドバイスは続いた。侍ジャパンからの金言が、九里の成長を後押しする。

 秋季キャンプでは初日から連日、真っすぐのみを100球前後投げ込んでいる。投球のリズムを生み出し、腕を大きく振る意識をつけるため、グラブを頭まで上げるワインドアップに取り組んでいる。キャッチボールでは、遠投に力を入れる。畝コーチが「以前は遠投になると、腕が下がる傾向にあった」悪癖も改善。回転のいい球を投げている。

 今キャンプ初の実戦での好投に、畝コーチは「先発をするつもりでいてもらいたい。期待している」と話す。2年目の今季は7試合登板に終わった右腕も、来季は先発入りしか見ていない。「先発に対して強い気持ちを持っている。同期の大瀬良が1軍であれだけ勝っている。負けたくない。競い合ってチームの勝ちに貢献できれば」。同期への強いライバル心と注入された侍イズムが、右腕の成長速度は上げていく。【前原淳】