阪神4年目の北條史也内野手(21)がプロ初安打を代打本塁打で決めた。7回2死で先発藤川の代打で出場すると、カウント2-1からDeNA石田の125キロスライダーを弾丸ライナーで左翼スタンド最前列へ打ち返した。

 「ホームランはたまたまです。入ると思わなかったので一生懸命走りました。早くヒットを打ちたかったので良かったです」

 声援に浸ることなく、全速力でダイヤモンドを駆け抜けた。ベンチ前で金本監督や先輩たちから手荒い祝福を受け、初めて笑みがこぼれた。

 「(ロッテ)田村とか(藤浪)晋太郎は1軍でバリバリやってるのに、自分だけ何してるんやろうって」。光星学院(現八戸学院光星)時代のチームメート田村はロッテで1軍捕手として活躍。3年春夏の甲子園決勝を戦った藤浪も同期で阪神に入団し、球界を代表する投手に成長した。一方で自身は伸び悩み、昨年、ようやくの初1軍を果たしたが1試合出場で打席は「1」のみ。焦りもあり、オフには高校時代の先輩ヤクルト川上に頼み込み、昨季トリプルスリーを達成した山田哲人らが行う合同自主トレに参加した。

 「もっとうまくなりたくって。トップの位置だったりとか、タイミングの取り方とか」と強打者のエキスを吸い取った。キャンプから山田の打撃フォームを取り入れ、オープン戦から結果を残した。

 金本監督や片岡、浜中両打撃コーチの熱血指導も実り、初の開幕1軍入り。3月29日に神宮でのヤクルト戦で山田と再会しても「直接あいさつは出来なかったです。遠くから会釈だけ」とベンチ要員の自分を恥じた。「打たないと残れないと思いますので、もっと打っていきたい」と、プロ初安打で立ち止まれない。【梶本長之】