プレーバック日刊スポーツ! 過去の8月1日付紙面を振り返ります。2014年の終面(東京版)は785日ぶりの勝利を挙げた日本ハム斎藤佑樹投手でした。

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<ロッテ1-3日本ハム>◇2014年7月31日◇QVCマリン

 長いトンネルを抜けた。日本ハム斎藤佑樹投手(26)が、12年6月6日広島戦以来、実に785日ぶりの勝利を挙げた。今季4度目の先発となったロッテ戦で6回6安打1失点7奪三振で、チームを4連勝に導いた。かつて甲子園を沸かせたスターが、高校野球真っ盛りの季節に復活の白星を挙げた。

 斎藤が、勝った。「2年間、本当にお待たせしました」。3者凡退は6回だけ。5回までの再三のピンチも粘った。「正直、こんなにつらい野球を続けるのかと思うと、しんどかったですけど、今日はすごくうれしいです」と、笑顔がはじけた。

 泥臭く、絶望からはい上がった。12年11月の日本シリーズ第5戦で登板後、右肩関節唇損傷を負った。野球を始めて以来、初めての大けがだった。「治療とか行ったら、すぐ治ると思っていた」という。名医がいると言われる全国の施設も数カ所回った。栗山監督からも紹介されたという。あらゆる手を尽くしたが、痛みは消えないまま昨季は春季キャンプに突入し、まともに投げられなかった。

 メスを入れることも頭をよぎった。球団と相談し、完治の可能性が100%ではない、手術は選択しなかった。保存治療を選択したが、不安はあった。「もし、去年の7月くらいまでブルペンでも投げられないようなら、最終手段として(手術を)考えていました」。中垣トレーニングコーチの熱心な指導もあり、昨年6月22日に2軍戦で実戦復帰。同10月2日オリックス戦で1軍復帰も果たした。1歩ずつステップを上がっていく裏には、強烈なプライドが土台にあった。

 早実時代の06年夏の甲子園で全国制覇。早大では東京6大学リーグ史上6人目の30勝、300奪三振を達成。4年時に明治神宮大会も制して大学でも日本一になった。「高校、大学といい成績を残してきた。だからプロ野球でも、いい成績を残したい。そこは、強く思っていました」。今季は2年ぶりの開幕ローテ入りも不調で4月に降格。2軍でも結果が出ない日々も続いたが、腐る理由はなかった。歩んできた野球人生が、自分を奮い立たせた。

 再出発の1勝は、プロ初勝利の相手と同じだ。11年4月17日ロッテ戦(札幌ドーム)は5回4失点で勝った。「こんなに簡単に勝てるんだと思った。でも、今日は何とか6回1失点。そんなに簡単にいかないんだと思った」。次回登板は未定で今日1日に抹消されるが、つらい過去を振り切った。「これから僕の第2の野球人生が始まります」と高らかに宣言した。

 日本ハム栗山監督(斎藤の勝利に目を潤ませ)「本当によかったね。感動は推進力になる。あいつが(チームに)何かを与えてくれたような気がする」

 日本ハム黒木投手コーチ(785日ぶりに勝った斎藤と同様、現役時代に右肩故障を経験)「苦しいリハビリ生活を乗り越えて勝てたことは喜ばしいこと。ただ、厳しい現実が待っている。そこを乗り越えられるかが、第2の野球人生でしょう」

 ◆斎藤とっておきメモ

 心を許す仲間には、再起への確信めいた思いを明かしていた。1月中旬、斎藤は都内で行われた早大野球部の同期会に出席した。右肩関節唇損傷に苦しんでいた昨年は予定が合わず欠席も、2年ぶりに顔を出した。同時期に一緒に自主トレを行っていた西武大石、広島福井ら28人中20人が集まった。応武元監督も駆けつけた。心配する仲間に「今年はいけそうな気がする」と好感触を口にしたという。

 同期からは励ましが相次いだ。「今年は頼むよ」「応援に行くから、頑張れ」。復活は難しいという声もあった。それを覆す原動力の1つは、気心知れた仲間の存在だった。今季は登板前も努めて謙虚な言葉を残してきた。あまり口には出さない自信を見せたのも、仲間との絆があるから。温かい後押しも785日ぶりの勝利までの支えになった。

<斎藤復活への歩み>

 ▼12年11月1日 日本シリーズ第5戦で初登板。2回4安打2失点も右肩関節唇損傷を発症。

 ▼13年2月1日 3年目で初のキャンプ2軍スタート。

 ▼同6月22日 2軍のフューチャーズ戦(鎌ケ谷)で実戦復帰の先発。2回1安打無失点。

 ▼同10月2日 オリックス戦(札幌ドーム)で12年10月5日楽天戦以来の1軍先発も5回途中5安打6失点。

 ▼14年2月1日 2年ぶりにキャンプ1軍スタート。

 ▼同3月29日 オリックス戦(札幌ドーム)で先発。6回9安打4失点で黒星。

 ▼同4月10日 楽天戦(札幌ドーム)で先発し2回途中2安打4四球で降板。

 ▼同4月11日 2軍降格。

 ▼同7月5日 2軍の西武戦(えんがる)で5回3安打無失点7三振と好投。

 ▼同7月9日 1軍再合流。

 ▼同7月12日 ソフトバンク戦で約3カ月ぶりに登板。5回4安打1失点と好投したが勝利は逃す。

 ▼同7月31日 ロッテ戦で今季4度目の登板。6回6安打1失点で785日ぶり勝利。

※記録や表記は当時のもの