3カ月ぶりに1軍復帰した中日高橋周平内野手(22)が打線に火をつけ、連敗脱出を導いた。右手有鉤(ゆうこう)骨の骨折が完治。出場選手登録され、6番三塁で先発すると、初回に3点目となる左前適時打。4回には左翼フェンス直撃の3点二塁打を放った。打線は今季最多の15得点を積み重ねる圧勝で、5連敗のトンネルを抜けた。

 高橋がお立ち台で少し笑みを浮かべた。「奇跡です!」。3月に満塁弾を放ったときのせりふを再現した。試合中から「おかえり」コールの嵐。5連敗中で最下位に沈む最悪の状況で、竜党には救世主に見えたのも当然だった。

 緊急昇格だった。午前10時20分開始でナゴヤドームで行われたウエスタン・リーグ広島戦で1回に大瀬良から右中間三塁打。視察した谷繁監督は「親子ゲームで久しぶりに見て、思ったより動けていた。あれだけ振れるなら、上げようと。初回は追い込まれてからしっかりとレフトに打てた」。8月昇格の繰り上げを瞬時に決めたという。

 5時台に起床して、いったん荷物をまとめるためナゴヤ球場を往復し、夜はフルイニング出場。「活躍したのが一番うれしいけど、先のことを考えると気が抜けません」。充実の表情で長い1日を振り返った。

 4月30日広島戦でスイングした際に骨折した。実戦復帰を間近にした6月に痛みがぶり返し、気持ちはどん底に落ちた。「野球をできないのはつらかった。1日でも早く戻ろうと思ってやってきた」。今でも痛みが出ないよう毎試合後にアイシングを欠かさない。

 監督就任以来、高橋に大きな期待を寄せる指揮官は、離脱中も厳しい目を向けてきた。「(活躍は)最初の1カ月だけでしょ。戻ってきて、結果を出し続けて初めて、あいつの成長といえる」。まだ復活劇の始まりでしかない。1つの軸を取り戻した中日が反撃に転じる。【柏原誠】