エースが打線の奮起に燃え、節目の勝利をつかんだ。西武岸孝之投手(31)が8回を4失点にまとめ、通算100勝目を挙げた。チームを最下位脱出に導く白星に、「たくさんの方に支えられてここまでくることができた。強く生んでくれた両親と支えてくれた家族に、まず感謝したい」と汗をぬぐった。ともに多くの勝ち星を積み重ねてきた捕手の炭谷の通算1000試合目でもあり、バッテリーそろっての区切りの一戦となった。

 野手の気持ちに、自らを奮い立たせた。3回までに3失点も、打線が4回に苦手武田から一挙4点を奪い逆転。「グッとくるものがあった。もう1度気を入れ直して投げました」。4回から4イニング連続で3者凡退に仕留め、リズムを生んだ。1点差に迫られた8回2死二、三塁では吉村を145キロ直球で押し込み中飛。感情を抑えて、軽くグラブをたたく姿が岸らしかった。

 忘れられない勝利は、100個の白星の中にない。プロ2年目で迎えた08年の日本シリーズ。初の大舞台で西口、石井一、帆足、涌井とともに先発を担った。2勝を挙げて日本一に貢献したが「勝てたことももちろん大きかったですが、(4人の姿から)ここぞって時に勝つ投球を学びました」。だからこそ、13、14年に託された開幕戦の黒星も忘れられない。エースとは「大事な試合で勝てるか。自分はそれが出来ていないから、まだまだなんです」と自戒を込める。

 この日は勝たなければならない一戦だった。14日に他界した元西鉄の豊田泰光氏をしのび、左肩に喪章をつけてプレー。西鉄の本拠地だった福岡での一戦だった。「恥ずかしい投球はできない」という覚悟で臨んだ。試合中も「思い出していました」と、勝利をささげる決意で腕を振った。エースらしい投球でつかんだ記念の勝ち星は、天国の偉大なOBへ届ける1勝となった。【佐竹実】

 ▼通算100勝=岸(西武) 16日のソフトバンク16回戦(ヤフオクドーム)で今季6勝目を挙げて達成。プロ野球134人目。初勝利は07年4月6日オリックス1回戦(京セラドーム)で、西武で100勝以上は06年松坂以来12人目。221試合目で達成は、松坂(191試合)郭泰源(213試合)西口(215試合)に次いでチーム4番目のスピード。