天敵攻略をキャプテンが実現した。阪神鳥谷敬内野手(35)が、チームが苦手としていたヤクルト山中から先制打&2カ月ぶりアーチだ。虎打線は山中に今季0勝3敗、防御率0・87と封じ込められていたが、今季初めて土をつけた。この2カ月で三塁に回るなど激動だったが、チームの苦境に大仕事を果たした。
鳥谷は踏み込んだ右足でグッとこらえた。外角低めスライダーに泳がされることなく、パチンと鋭く振り抜いた。「チャンスで回ってきたのでなんとか、と」。3回1死一、三塁。右前ライナーで先制点をゲット。その瞬間、三塁側ベンチの空気が確かに一変した。
マウンドにはサブマリン山中がいた。試合前時点で今季0勝3敗、防御率0・87と封じ込められていた相手。浮き上がる直球、変化球を打ち上げるケースが目立っていた。試合前、首脳陣は「ゴロ打ち」徹底を指令。キャプテンは率先して狙いを体現した。
1点リードの5回1死。内角低めスライダーを再び打ち上げることなく、ライナーで右翼席に7号ソロ。7月5日巨人戦以来、2カ月ぶりの1発で岩貞を援護。「(山中相手とか)細かいことは考えず、とにかくチームが勝てるようにと思っていた」と納得した。
「ちょっと、いい?」
8月30日中日戦(ナゴヤドーム)の試合序盤。三塁側ベンチで立ち尽くす藤浪の隣に体を並べ、優しい表情で語り始めた。右腕は1回7失点の大乱調で早々に降板。福留からマウンド上での姿勢をしかられて間もないタイミングだった。
「結局は、自分がいいと思って選んだやり方で頑張るしかないよ。これまで、それで結果を残してきたんだから。大丈夫だって」
成功すればこれでもかと褒めたたえられ、失敗すれば容赦なくたたかれる。人気球団の主軸として宿命と付き合ってきた。今季不振にあえぐ若き大黒柱の苦しみは痛いほど理解できる。福留がどれだけの覚悟を持って怒りを示したのか、そこは心で受け止めてもらうしかない。必要以上にかばうつもりはない。ただ、信じてきた道を簡単に後戻りしてほしくはなかった。
それは自分自身に置き換えても同じことだ。聖域だった遊撃を離れ、三塁先発7試合目。「チームに必要とされる場所で頑張るだけ」。日々妥協なき準備を貫くだけだ。3回の適時打で12年連続100安打を達成したが、「特に…」と興味は示さなかった。「打てば雰囲気は良くなる。どんどん打っていければ」。残り11試合。シーズン終了の瞬間まで、必ず全力で走り抜く。【佐井陽介】
▼鳥谷が3回に適時打を放ち、プロ2年目の05年から12年連続100安打に到達。阪神では12年連続の藤田平(67~78年)、和田豊(88~99年)に並ぶ球団最長タイ。
▼鳥谷のアーチは2カ月ぶりだが、マルチ安打も8月11日以来。打点も8月21日以来のことだった。
<不発の鳥谷 2カ月の苦闘>
◆7月24日 広島戦(マツダスタジアム)の先発メンバーから外れ、連続試合フルイニング出場が667で終了(プロ野球4位)。試合前には三塁の位置でノックを受けた。6回に代打で出場しそのまま遊撃に入り、連続試合出場は継続。
◆8月3日 DeNA戦(横浜)に「3番・遊撃」で9試合ぶりに先発復帰。3安打の猛打賞で復活をアピール。先発落ち8試合の間9打数6安打、打率6割6分7厘と好調だった。
◆同12日 中日戦(京セラドーム大阪)で再びスタメン落ち。以後17試合先発メンバーから外れる。
◆9月3日 DeNA戦で12シーズンぶりに三塁を守る。6番三塁で先発復帰。1年目の04年9月11日横浜戦以来、通算31試合目の三塁守備で、同年6月20日巨人戦以来、14試合目の三塁先発だった。1回に先頭の桑原の三ゴロを難なくさばいた。



