日本ハムが中核2人の活躍で、悲願の優勝へまた1歩近づいた。4回に中田翔内野手(27)が110打点目となる先制の左前適時打を放つと、さらに2死一、二塁の好機で、陽岱鋼外野手(29)が中堅席左へ13号3ラン。栗山英樹監督(55)が「ウチは翔とダイカンのチーム」と言い続けてきた主軸のバットで、61年東映時代の球団記録に並ぶ83勝目。首位をキープし、優勝マジックを1つ減らし「5」とした。

 バットをポンと放り投げた。「完璧でした」。陽は右拳を何度も突き上げた。1点リードの4回2死一、二塁。楽天則本のスライダーを中堅左へ突き刺した。痛めている右肋骨(ろっこつ)も「言い訳にはしたくない」。ベンチへ戻ると、口火を切った中田と、手のひらを振り上げる“決めポーズ”で喜びを分かち合った。

 直前の4回1死三塁。中田は内角の直球に詰まらされたが、力で押し込んだ。左前への先制打。「集中できた。大振りでは絶対に当たらないと思った」。リーグトップを独走する110打点目。陽の劇的弾へ、道筋をつけた。栗山監督は「やるべき人がやってくれると、ウチのチームはやりやすい」。就任以来、中核だと言い続けてきた2人。連勝がストップした前夜の嫌な流れを断ち切った。

 打撃不振と腰痛で中田がスタメンを外れた6月下旬、4番に据えられたのが陽だった。代役4番初戦の同28日の西武戦。2安打を放って勝利に貢献したが、栗山監督と一緒になった帰りのエレベーターでは、左腕をさすり険しい表情をつくった。実は5回の打席で、ポーリーノの速球が同部を直撃する死球。試合中はまったく痛がるそぶりを見せておらず、不思議がった指揮官にひとこと、「4番なので」。結果だけではなく、戦う姿勢を求められるのが4番。陽なりに、主砲としての役割を務め上げた。

 マジックは1つ減って「5」。04年の本拠地移転後最多となる83個目の白星も挙げたが、目標はそこにはない。中田は「ウチは勝つだけ」。陽も「優勝しか見ていない」と気を引き締める。残り5試合。栗山監督は「残り試合を勝ち切る。絶対に優勝するんだという思いでやっている」。ラストスパートに欠かせない2つのピースが、はまった。ゴールテープは、もうすぐそばまで迫っている。【本間翼】