さらば黒田-。広島黒田博樹投手(41)が今季限りで現役を引退することが18日、分かった。同日中に記者会見を行う。

 この日はスーツでマツダスタジアム入り。黒田の意向もあり、練習前にナインに自らの口で伝えた。「個人的なことで申し訳ないが、日本シリーズ限りでユニホームを脱ぐことを決めました」などと話した。25年ぶりの優勝をつかみとった男気(おとこぎ)右腕らしく、格好良くユニホームを脱ぐ。

 黒田はここ何年も、自分の去就と向き合ってきた。広島に復帰した14年12月も、引退は広島復帰と同等の割合で頭にあった。最終的には「あと何年野球ができるかわからない。カープで野球をするほうが、より1球の重みを感じられると思った」と復帰を決断。20億円とも言われたメジャーからの巨額のオファーを断った。「男気」は黒田を象徴する言葉となった。

 昨季は11勝を挙げたが、昨オフも去就に悩んだ末に現役続行を決めた。「ぜいたくでわがままかもしれないですけど、この年齢になって、この体でもう1年野球をするというのはしんどい」とこぼしていたが最後は「(若い選手に)必要とされている部分を見せられると、振り切ってまで(やめる)というのは難しい。特にまだまだ伸びしろのある投手がたくさんいるので、少しでもプラスになるなら」と現役続行を決めていた。

 退路を断って臨んだ今季は開幕2戦目のDeNA戦で初勝利続く4月2日の巨人戦(東京ドーム)では日本球界復帰後初完封。4月30日までに6戦で4勝をマークするなど好スタートを切った。勝ち星に恵まれない時期もあったが7月23日阪神戦(マツダスタジアム)では7回無失点で7勝目。これが日米通算200勝目の節目となった。その後も優勝を決めた9月10日の巨人戦(東京ドーム)で先発。6回3失点で9勝目をマークしていた。シーズン最終戦となった10月1日のヤクルト戦(マツダスタジアム)でも7回1失点で勝ち、7年連続2桁勝利をマークした。

 輝かしい成績の一方で、体はボロボロだった。メジャー時代に打球を頭部に受けた09年からは後遺症とも闘った。試合前に「背中の骨がスレてる感じ」で首をひねることができなくても、「日本人がナメられてたまるか」とマウンドに上がったという。昨季は右腓骨(ひこつ)筋腱(けん)周囲炎(右足首の炎症)で抹消を経験。今季も慢性的な肩痛、首痛に悩まされていた。CSでの登板を控えた今月10日にはキャッチボールを中断して、トレーナーからマッサージを受けた。「いつものこと」と話したが、体は限界だった。

 チームへの還元は大きく、今季も後輩へのアドバイスを惜しまなかった。CS前には球団にモチベーションビデオを提案し、作成に立ち会った。「広島のために」を思い続けていた。

 黒田は96年に逆指名によるドラフト2位で入団。07年まで広島でプレーした後、FA宣言でメジャーに移籍した。06年から挑戦の意思はあったものの、ファンの熱意に押される形で残留。07年に涙の末に移籍した。メジャー通算7年間で79勝79敗。14年には8年ぶりに広島に復帰していた。

 日米通算203勝184敗、防御率は3・51。05年に最多勝、06年に最優秀防御率を受賞。ベストナイン、ゴールデングラブ賞を1回受賞。通算3340回2/3を投げた。