「つなぎの9番」が勝負を決めた。楽天は2-2の同点で迎えた6回、9番嶋基宏捕手(32)が勝ち越し右前打。このV打が最強2番ペゲーロの2点適時打と打線をつなぎ、相手エースの涌井をKOした。これで首位を走るチームは、日本一となった13年以来4年ぶりの貯金5となり、2位ソフトバンクに1・5ゲーム差をつけた。

 数々の修羅場を切り抜けてきた嶋が、相手エースとの勝負に打ち勝った。0-2から2点差を追いつかれて迎えた6回。2死一、二塁、カウント2-2から5球目の外角高め143キロ直球を右前にはじき返した。「追い込まれていたので、どの球にも対応できるようにコンパクトにいった。落ちたところが良かった」。さらに1番茂木の四球を挟んで、2番ペゲーロが2点二塁打。昨年チームで3勝を献上した苦手涌井を降板に追い込んだ。

 勝敗を決する場面だけに、1ボール2ストライクから慎重を期す捕手田村がマウンドの涌井を訪れていた。続く4球目には、この日最速タイの148キロ直球を投げてきた直後だった。「涌井は真っすぐに切れがあった。(強い)風もあって(ボールが)吹き上がっていた」。第1打席は直球を4球連続でファウルした末、10球目に右飛を打ち上げていた。徐々にタイミングを合わせ、意図を持ってスイングを小さくした第3打席に結果を出した。

 好調楽天打線は、リーグ3位の3本塁打、同2位の10打点と強打2番ペゲーロが鍵だ。だが、陰の立役者は嶋だ。ここまで9番打者ながらリーグトップの5犠打。打率こそ2割1分4厘と低いが、出塁率はリーグ5位の4割5分。リーグ2位の6四球を選び、つなぎ役として機能している。だからこそ、2番がポイントゲッターという常識外れの結果が生まれている。

 楽天はこれでオリックス金子と西、ソフトバンク千賀、バンデンハークに次いで、またも相手エース級の登板試合をものにした。この日は初回に40球を投げさせるなど、打線全体につなぐ意識が浸透している。これで13年以来の貯金5。球団史上初の開幕3カード連続勝ち越しにも王手をかけた。梨田監督は「プレッシャーに強くないんで、気にしないように」と笑みを浮かべた。今年のパ・リーグ、ひょっとすると波乱が起きるかもしれない。【斎藤直樹】

 ▼楽天が開幕7試合で6勝目。05年の球団発足以来、6勝を挙げた試合数では09、13年の各9試合を上回る最速となった。楽天が貯金5をマークしたシーズンは08、09、13年に次いで4年ぶり。