<中日6-1巨人>◇16日◇ナゴヤドーム

 目を赤くした中日川井はウイニングボールを見つめた。「プロに入る前に他界したオヤジにささげたい。(今も)見てくれていると思います」。4年目のプロ初勝利に、自然と涙が流れた。

 「魂込めて投げた」。プロ1年目の05年10月2日広島戦以来927日ぶりの先発だった。初回に1点を失ったが、試合前に「絶対に勝たせてやる」と口をそろえた味方打線の援護で、波に乗った。100キロ台のカーブと直球を駆使し6回6安打1失点。低めをつく投球で内野ゴロ11、うち2個は併殺打だった。「自滅だけは絶対にしない」と無四球だった。

 04年2月に他界した父行夫さん(享年59)の教えがあった。「最後までやり通せ。あきらめるな」。経済的な理由もあって、野球を続けることを悩んだ時期もあった。だが大東大から日本通運に入った際に励まされた。ウイニングボールは長野県佐久市内の実家の仏壇に供える。年俸900万円(推定)の4年目左腕が強力打線を抑え連勝した。川井は開幕16試合目で8人目の先発。落合監督は「本当にいい競争をしているんじゃないか」としてやったりだ。生存競争を繰り広げる投手陣から、また新星が誕生した。