<ヤクルト2-4阪神>◇20日◇神宮

 アニキには「キモイ」かもしれないが、虎党にはこれほど気持ちいいことはない。3番新井が2戦、11打席ぶりに放った安打が、勝利をぐっと近づけた。7回2死から赤星、平野が連続四球を選んで作ったチャンス。しぶとく三遊間を破る一打で、点差を「2」に広げた。

 直後に兄貴分の金本も適時打で続いた。これで金本とアベックで打点を挙げれば8戦負けなしの神話がまた伸びた。先制2ランも放っている金本はヒーローインタビューでこう言った。

 「それは8、9番、1、2番あたりがチャンスを作ってくれているからですね。新井はキモイです。(定番の言葉になっているがに)ええ、定着させようと思っています」

 2人そろっての活躍を「キモイ」と突き放すアニキ。12日の横浜戦で通算1000本安打を、2000本の金本と同時に達成してから、手荒いセリフで祝福されている。腹を抱えて喜ぶ神宮のファンを見れば、新井もちゃかされた甲斐もあるというものだが…。

 「赤星と平野に打たせてもらった。2人が粘って、つないで、チャンスを作ってくれたのでね」

 傍若無人のアニキとは対照的に、新井はきまじめに1、2番を持ち上げた。9回に首脳陣が激怒した左ひじへの死球を受けても、さらりと「大丈夫です」とトレーナーを制した。実直な弟はどんな仕打ちにもめげずに、アニキとの共同作業にいそしむ。それがチームを勝利に導く近道だと分かっている。【町田達彦】