<中日6-3楽天>◇9日◇ナゴヤドーム

 ベンチに座った山本昌は複雑な表情でグラウンドを見つめていた。3点リードの6回、1死から連打で1点を返された場面で降板した。だが、2番手吉見が満塁から同点タイムリーを浴びた。この瞬間、数分前まで手中にあった通算197勝目が消えてしまった。

 「チームが勝ってくれれば、それでいいです」。

 山本昌は試合後、さばさばと話した。プロ25年、リリーフに助けられたことも数知れない。だから、決して自分の後の投手に対して不満を示すことはない。結果こそ非情だったが、白星に値する投球だった。

 42歳の中4日登板をめぐり、試合前に指揮官同士が繰り広げた舌戦。それに答えを出すような快投だった。初回2死一塁、かつての同僚で交流戦のライバルである4番山崎武を迎えた。カウント0-3から直球で追い込むと最後はスローカーブでタイミングを外して空振り三振に仕留めた。

 6回1死から連打を浴びて1点を失ったところで降板。5回1/3を2失点。走者を残してマウンドを降りたが、4日のロッテ戦で75球を投げてから今季初の中4日登板の影響は感じさせなかった。楽天田中との23歳差の“マサヒロ対決”で貫録を見せつけた。

 試合後、落合監督はあえて注文をつけた。「あいつはすぐ(交代の)シグナル出すからな。もう1回いってくれれば楽になるのに。それを乗り越えてくれればな。まあ、きょう悪かったら抹消だったけどね。これであいつも次の登板があるっていうことだ」。通算200勝まであと4勝と迫ってから3試合連続の足踏み。大記録を達成するための試練なのかもしれない。【鈴木忠平】