<中日5-2阪神>◇16日◇ナゴヤドーム

 中日チェン・ウェイン投手(23)が56日ぶりの復活星で、チームを3位タイに踏みとどまらせた。中盤から球威を増す投球で7回8安打2失点。1番森野将彦内野手(30)の18号ソロを含む3安打3打点の援護にも守られ、今季最多の9三振を奪った。3位に並ぶ広島との激しいクライマックス・シリーズ(CS)進出争いが続く中、先発不足に苦しむチームに光が見えた。

 チェンが両手をたたき合わせて雄たけびをあげた。3-2の7回2死一、二塁。4番金本をカウント2-3から空振り三振に仕留めた。最後は外角にズバッと142キロ。7月22日広島戦以来の5勝目を引き寄せ、抑えていた感情を解き放った。「負けない、の気持ちだけです。四球でもいいから思い切り投げた」。お立ち台でも興奮は収まらなかった。

 大事な1戦を任されていた。広島に追い上げられ、前日15日、今季初めて3位タイに並ばれた。この日の阪神戦に負けたり引き分ければ、広島の結果次第で4位転落の可能性があった。開幕当初を除けば04年5月17日に4位となって以来のBクラスだ。

 前半はオトナの投球に徹した。初回はストレートの球速を140キロ前後に抑え、制球重視で勝負した。初回2死一、三塁で鳥谷を見逃し三振に仕留めた外角直球も140キロ。変化球を交え、打者の打ち気も巧みに外した。4回、鳥谷に11号2ランで追い上げられ、スタイルを変えた。ベンチで立浪から「下半身を使えていないぞ」とアドバイスされ、5回からギアをトップへ。直球のスピードは5キロ上がり、最速147キロをマーク。7回までに今季最多の9三振を奪った。

 チェンにとって、復活を期したマウンドでもあった。台湾代表として北京五輪に出場したが、帰国後にスランプに陥った。先発した3試合はいずれもKO。中盤につかまるパターンが続いた。スタミナを取り戻すため、前回登板翌日の11日に異例の長距離走に取り組んだ。通常30分のところを1時間9分。「100球以上投げられるようにしないといけないから」。その日はベンチで山本昌の登板も見守り、森バッテリーチーフコーチから投球術のレクチャーも受けていた。

 チェンの復活は、激しいCS進出争いを繰り広げるチームにとって大きい。相次ぐ主力の故障離脱により先発不足をやりくりしているのが現状だ。残り試合を戦い抜くため、そして短期決戦のCSに向け、山本昌に次ぐ柱を固めることが急務となっている。

 落合監督はチェンの好投には触れず、9回の守備の乱れを指摘した。「野球が下手だ。(失策した)中村紀がどうこうじゃなく、ひとつのプレーで尾を引く場合もある」。勝ってかぶとの緒を引き締め、残り16試合。その先にCSが待っている。【村野

 森】