<阪神5-4巨人>◇6日◇甲子園
球児が猛虎で1番の守護神になった。1点差の9回は一、三塁まで攻められたが、巨人高橋を中飛に打ち取ってゲームセット。今季3セーブ目で通算130セーブとなり、山本和行氏の持つ球団記録に並んだ。打倒巨人を使命と心得る藤川球児が、宿敵からの白星発進を締めた。
藤川球児投手(29)が最後のリミッターを外した。5-4の9回、今季初めて1点差リードで、マウンドに立った。2死一、三塁。わずかな狂いも許されない瀬戸際で、巨人高橋と対した。
初球、ド真ん中の151キロ。ボールがバットの軌道の上を通過する。ワンテンポ置いてから、ため息にも似たごう音が響き渡った。カウント2-1からの勝負球は、ぐんぐん浮き上がる153キロの火の玉ストレートだ。高橋もタイミングは合わしてきた。スタンドから悲鳴が起こった。打球はバックスクリーンめがけて飛び出した。だが、マンモスの空で力を失い、マートンのグラブにたどり着いた。130個目のセーブ。この瞬間、名実ともにトラ史上最強ストッパーになった。「ヒヤッとしたというか、1点差やからね」。球児は帽子を取って一礼した。頭を上げると、そこには笑顔があった。
勝ちに飢えていた。優勝を本気で狙っていた昨季。V戦線から脱落したことで、勝利を締めくくる自分の仕事場にも、違和感を感じていた。昨年末、自主トレの地に選んだのは地元・高知だった。プロ入団以降初めての決断だった。
甲子園だけを目指していた。あのころを思いながら、高校生を横目に見ながら兄順一さん(30)と、毎日キャッチボールした。2人で高知商時代の監督正木陽氏(50)のもとを訪ねた。「おまえ、こんだけお世話になったんやから、ずっとタイガースにおらないかん」。将来的なメジャー挑戦を表明してから、周囲の誰もが避けていた言葉を、ズバッと投げ込まれた。がむしゃらだったあのころを思い出した。「そう言われるのが、ありがたいです」。高校時代にタイムスリップし、もう一度、純粋に野球と向き合えた。
入団後、芽が出るまでには時間がかかった。守護神の座を手に入れたのは、05年9月9日広島戦、甲子園のマウンドだった。1670日、守護神の道を走り続けた。記念のウイニングボールも「いらんわ」と笑い飛ばした。ほしいのは勝利だけ。通過点には見向きもせずに走り抜けた。【鎌田真一郎】
[2010年4月7日11時38分
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