球界に再び激震が走った。横浜ベイスターズの親会社TBS(東京放送ホールディングス)が球団の身売りを検討していることに対し、巨人の渡辺恒雄球団会長(84)が9月30日、東京都内で、これを認める発言をした。TBSの巨額な赤字が引き金で、本拠地の新潟移転の可能性も含めて、身売りへの動きが慌ただしくなってきた。

 渡辺会長の口から、衝撃の事実を裏付ける言葉が飛び出した。「残念だけどTBSも事情があるし、こういう不況でしょうがないよね。だけど、だいたい分かっている。ハゲタカファンドとか。ああいうのみたいなのが買ったら、えらいことになる。まともな実業家がね…」。その先の「買ってほしい」という言葉こそ口にはせずにのみ込んだが、その内容はTBSの球団身売りを容認するものだった。

 そもそもTBSが球団を持つことになったのには、渡辺会長が一役買っている。01年11月にニッポン放送が横浜の筆頭株主になることが実行委員会で1度は承認された。だが、同会長がヤクルトの株との二重所有を問題視し、TBSが筆頭株主になることに尽力した。だからこそ、TBSが球団を手放すことを認めた発言には重みがあった。実際、TBSサイドは水面下での身売りに向けた準備を進めていた。30日発売の一部週刊誌でも、候補として3社が報じられるなど、身売り情報は周囲に漏れつつあった。

 身売りに動くことになった背景にはTBSが10年3月期連結決算で、同決算の公表を開始した01年3月期以降では初めてとなる赤字に転落したことがある。視聴率が伸び悩み、広告収入にも響いたことで23億1300万円もの赤字(前期は16億5500万円の黒字)になった。連結売上高も前期比5・7%減って3512億6200万円の減収減益となっていた。毎年、10億を超す赤字の球団経営には厳しい状態となっていた。また球団所有後、Aクラスは1度しかなく、今季はプロ野球史上初の3年連続90敗を喫するなどの成績低迷も拍車を掛けた。

 渡辺会長は、横浜の球団経営のネックとなっている横浜スタジアムとの契約についても言及した。「横浜球場(スタジアム)は株主が相当がめついんだよ。球場の広告も相当とられる。使用料も広告も全部持っていかれちゃう。(本拠地球場を)変えれば、今度のオーナー会社もまともな球団運営ができると思う。そういうことをやらないと。考えているだけじゃダメだ」。横浜市のみなとみらい地区に開閉式ドーム球場を建設する案があることを指摘。さらに球団誘致を目指している新潟県については「立派な球場があるし、選択肢としてはいい」と話した。事実、本拠地は難しいにしても“準フランチャイズ”は可能とみられている。

 30日、横浜の若林オーナー、加地社長ら球団幹部は球団事務所に姿を見せなかった。報道陣との接触を避けるようにしている中での、渡辺会長の発言が、横浜ベイスターズの現状を物語っていた。

 [2010年10月1日9時19分

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