<阪神2-4巨人>◇26日◇甲子園

 「甲子園男・沢村」の誕生だ。巨人のルーキー沢村拓一投手(23)が26日、阪神戦に先発し、7回6安打無失点で4勝目を挙げた。前回登板の19日西武戦に続き、力をうまく抜きながら、調子の上がっていた猛虎打線を抑えた。4月21日の阪神戦で7回1失点。得意の甲子園でプロ初の連勝に加え、2戦2勝だ。防御率も1点台(1・94)に突入。東野、内海で連敗したチームを救い、1日で3位に導く好投を演じた。

 思うように勝てなかったころの沢村なら失点していたかもしれない。2回裏、2死一、二塁。8番藤井彰を2ストライクと追い込んで、外角のボールゾーンにしっかりと1球外し、最後は高めの146キロ直球で空振りを奪う。阿部の要求通りに投げ、仕留めた。

 沢村

 周りが見えるようになってきた。押すところは押す。引くところは引く。まだできてないところもありますけど、阿部さんにも言われて、打者を見て投げられるようにこれからもやっていきたい。

 焦らず、投げ急がない。精神的な成長が好投の原動力だった。直前の2回表。1死一、三塁で命じられたスクイズが投手への小飛球になり、併殺で一瞬にして追加点機が途絶えた。これまでなら、直後のピンチで力んでいただろう。しかし、冷静に投球に集中した。

 前回登板の19日西武戦が大きな転機だった。150キロの剛速球はなくても、力を抜いて7回を5安打無失点。その2日後、沢村はこう話していた。

 沢村

 球速を出したら負けると思ってたんで。(力を)抑えましたね。心に余裕ができてきました。今、充実してますよ。

 勝てるピッチングのコツをつかみ、3勝目を挙げたことで、ゆとりができた。この日も150キロ超えの直球は1打席目のブラゼルに対してだけ。意識的に力の入れどころを変えた。14イニング連続無失点で、防御率も1点台に突入した。

 技術的な成長にもまだまだ貪欲だ。2勝の後に2連敗した時に「なにかを変えないと勝てないと思うんです。変わりたいです」と話した。自覚を持って練習に取り組み、中継ぎの久保にリリース時の腕の振り方を聞いた。「言える範囲と言えない範囲があるので」と中身を明かさなかったが、勝てる投手になるために、先輩投手陣の技術を吸収しようと必死に助言に耳を傾けた。

 巨人戦8連勝中だった能見に投げ勝ち、同一カード3連敗を阻止。チームを1日でAクラスに返り咲かせた。原監督も「非常に相手を見ながらピッチングができるようになった。そこら辺が成長したところ」と、ねぎらった。「オールスターまでに(勝ちと負けを)イーブンにしたい」と沢村は目標を掲げるが、球宴前までに3度登板が予想される。イーブンでは物足りない。勝ち方を理解した今なら、連勝街道を突っ走りそうだ。【斎藤庸裕】