<広島1-2巨人>◇27日◇マツダスタジアム
ひるまずに、踏み込んだ。巨人長野久義外野手(26)が、同点の8回2死三塁の場面で、今村から右中間へ勝ち越し適時三塁打。7日の対戦で左ほおに死球を受け、左頬骨(きょうこつ)にひびが入る重傷を負った。歩かされてもおかしくなかったが、正々堂々勝負を挑んできた右腕に、意地の一撃を見舞った。チームは再び、勝率を5割に戻した。
長野の心に、一点の曇りもなかった。1-1の8回2死三塁で、マウンドには広島の今村。20日前の7日、この場所で同じように対峙(たいじ)し、左ほおに死球を受けて退場していた。その光景が頭をよぎっても、おかしくはない。一塁、二塁も空いていた。だが、長野は「勝負だろうと思っていました」。死球の因縁も何も関係ない。「(投手があの今村とは)全然分からなかった。思い切っていこうと思ってました」。
真ん中に入ってきた2球目直球を迷わず振り抜くと、打球はセンターのフェンスを直撃した。負ければ5位転落もあり得た状況で、値千金の決勝三塁打。塁上で拳を強く握り、突き上げた。「東野が代わった回で得点したかった。いいところで打てて良かったです」。自らの悪夢を、巨人にたれ込めかけていた暗雲を振り払い、前田健とのエース対決で力投した先発東野に白星を付けられた。
死球による左ほお骨の亀裂骨折は気にしていないと話す。そのうえ、周囲にも気にさせないようにしている。試合当日に今村から謝罪の電話を受けた際には、「大丈夫だから気にするな」と声を掛けた。また、東京ドームで対面した際にも冗談で「もうインコースに投げないでね」と、罪の意識にとらわれる今村の気持ちをほぐした。相手を思いやりつつ、「よけられなかった自分が悪い」と、自らの課題とする姿勢もあった。そんな意識が逃げずに踏み込ませ、最高の一打を生み出した。
3安打完封負けの前夜に続き、この日は前田健に6回まで3安打無得点。そんな中で7回に阿部が同点打を、8回に長野が決勝打を放った。原監督は「完璧に抑えられてましたからね」と、エース対決を制しての逆転勝ちに目を細めた。上位5チームが5・5差内にひしめき、混戦模様となってきただけに、この1勝は大きい。【浜本卓也】



