<オープン戦:広島1-5巨人>◇6日◇マツダスタジアム

 今年のヨシノブはやる。巨人高橋由伸外野手(36)が、「8番右翼」でスタメン出場。3回の第1打席、広島先発バリントンの外角直球を流し打ち、左中間席に放り込んでみせた。外野の定位置争いは群雄割拠の最激戦区。実力、実績とも抜けているプロ15年目のド本命が、高々とのろしを上げた。

 高く上げた右足も、ヘルメットの左耳に添えてつくったトップも、彫像のように動かなかった。高橋由は右肘につけた白い肘当てだけをぴくりと動かし、タイミングを取った。「追い込まれていたので何とか手を出さないと」の謙遜したコメントとは180度違った。広島が誇る巨塔・バリントンの外角、やや高めの直球を、美しいレベルスイングでつかまえた。

 感触は「振り切れた、というか乗っかった感じかな」とまた謙虚だった。確かに920グラムだった例年より10グラム重くして振り込んできた白木の芯に乗っかった。左右非対称の形状で、左翼に向かって抜けやすいマツダスタジアム特有の風にも乗っかった。ただ、リーグ屈指であるバリントンの強いボールを、「狙ってない」にもかかわらず左中間スタンドへ入れた事実は重い。12年の高橋由伸は順調に仕上がっている。証明するに十分なオープン戦1号だった。

 「天才」と評されるが、「繊細」が正解だ。スイングの終盤、優しく握ったグリップの左手を離した。最後は右手1本で、大きなフォローを出した。チーム方針で今季からスプレータイプの滑り止めが禁じられた。粘性の高い松ヤニを用いるが、自身は「ギュッて持って打つバッターにはいいかもしれないが、手を離したりしたい」タイプ。ネクストで松ヤニを塗っていては粘性が高すぎ、左手は離れてくれない。「松ヤニを前もってつけて。ちょっとなじませてから打つように。一生懸命やってます」。打席でベストとなる状態を探り出し、変わらぬスイングアークを作り上げた。

 「結果は出ないより、そりゃ出た方がいい」。このひと言は本音だ。ヤクルト小川監督は「巨人の外野争いはどうなるの。相手からして、本当に嫌なのはヨシノブ」と本音を漏らしている。外野定位置争いは激しさを増す。ただ簡単に若手に明け渡すほど、高橋由の培ってきた技術はヤワじゃない。【宮下敬至】